組織形態から思う「人を大切にする経営学会」の未来像

株式会社の起源

世界で初の株式会社は、1602年、東インド株式会社であることは、

中学校の世界史の時間で習った通りである。

  • 当時の貿易会社の大半が1回の航海毎に精算をしていたが、事業継続して長期にわたる植民地の維持が可能にした。
  • 無限責任制から、有限責任制に気軽にカネを投資できるようにした。
  • 持ち分としての株式の譲渡が自由した。

アムステルダムの証券取引所で、同社の株頻繁に取引され、

近代的な資本主義が始まった。

協働組合の起源

世界で初めて生協が誕生したのは、

1844 年、イギリスのロッチデールという小さな町の

職工 28 人が「ロッチデール公正開拓者組合」の店をつくったことからである。

当時、イギリスの労働者は、産業革命のあおりを受け、

低い賃金と高い物価、悪質な商品に悩まされていた。

何とか苦しい生活から逃れようと考えた末、

週 2 ペンスの積み立てを続け、

1 年かけて 1人 1 ポンドずつのお金を出し合って、

安心して利用できる自分たちの店を持った。

同組合は、

1.購買高による剰余金の分配、

2.品質の純良、

3.取引は市価で行う、

4.現金取引、

5.組合員の平等(一人一票制)、

6.政治的・宗教的中立の原則、

7.組合員の教育促進、

などを運営原則として定めた。

非営利法人NPOの起源

アメリカにおいては、NPOのはじまりは宗教団体の慈善行為である。

NPOが発展したのは1960年代、

社会政策としてNPOに公共支出が振り分けられ、

NPOの財源は寄付金に加えて政府補助金と

政府からの業務委託にもつながっていった。

日本の企業数は約360万社 中小企業白書/小規模企業白書 2023年度(中小企業庁)

2020年度協同組合の総数は約4万1千組織

一般社団法人 日本協同組合連携機構(JCA2020 事業年度版 協同組合統計表)

2021年度NPO法人数の推移 1120 組織内閣府NPOホームページ

こうしてみてみると、株式会社が最も歴史があり数も圧倒的に多い。

そのため、多くの人は、株式会社の常識が当たり前にあるのではないかと思う。

現在、将来構想委員会があり、

「人を大切にする経営学会」のこれからのあり方が議論されていて、

メンバーの一人から、

「役員が将来、この学会をどうしたいか聞いてみたい」といった発言があった際、

私は、

「学会に熱心にかかわり、吉本興業のように新しいスターが出てきて

活躍できるようになったらいい」

といった発言をした。

このことは、昔からの私の持論である。

杉良太郎一座、森光子一座では、一代限りになってしまうからである。

こうした考え方から、私自身は、多くの学会に所属する方から活発に意見が出て、

組織全体でその思いに応えていくことが重要だと思う。

学会は、すべてが同じではないが、

出資が学会員といった面からすれば協同組合に近いのではないかと思う。

つまり、個人会員が一人1万円、法人会員が一口5万円の年会費を払い

活動に参加しているからのである。

株式会社のように、誰かの出資額により権限が付与されるものでもなく、

NPOのように、寄付や行政の委託で成り立っているものではないからだ。

私は、2014年創業期から役員を勤めてきたが、

まだまだ、学会としてできていないと感じることがある。

個人的な意見だが、

「もっと学会員の声を聴く仕組みと実践」が必要だと感じる。

年に1度の総会だけでは、

多くの学会員は、学会の活動について部分的にしか理解できないからである。

株式会社においても、現場の意見を聴くことは重要であるが、

一律に多くの学会員の会費で運営されている学会ではなおさらである。

意思決定に時間が掛かるといったデメリットもあるが、

もし、意思決定のスピードが重要であれば株式会社の形態をとるべきである。

執行部は、学会員の声を聴いて

「できること、できないこと、その理由」をしっかり説明する責任がある。

衆議院議員選挙で、政治とカネの問題がクローズアップされたが、

それは、政党交付金という税金が投入されているにも関わらず、

パーティー券で得た収入が届けなかったことである。

つまり、どのようなお金かといったこととが問題なのである。

学会員全員が出した学会費の1万円も、

規模は違うものの税金のようなものであると思う。

そうであれば、株式会社以上に使われ方は厳密に精査されるべきである。

しかし、株式会社の運営になれるとそうした意識が薄れてしまう。

国政では民意といった言葉があるが、

まさに、学会の活動や予算については、学会員の意思が反映されなければならない。

物理的に全員の意思をそのまま反映することは、人数が多くなるほど難しい。

なかなか理想通りにはいかないが、組織運営においては外せない観点だと思う。

藤井 正隆

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