大企業の責務
本光司先生の「「日本でいちばん大切にした会社」がわかる100の指標」の第94番には、「研究開発・新業態開発・新市場開発、そして新サービス開発等を日常的に行っている社員が全社員数の10%以上いる。」ということが掲げられています。
この指標は、日本でいちばん大切にしたい会社大賞の審査項目の一つにもなっています。
いい会社は日常的に社員の10%を、今日のためではなく明日以降の事業の継続のために投入していると坂本先生は断言します。事業を永続させていくためには、目先の利益だけではなく、将来のための活動を今することが大切なのです。これは、大企業でも中小企業でも同じです。しかし中小企業では財務的にも人財的にも新規事業等のための活動は限界があります。またあまり遠い将来のための活動は難しく、ある程度の期間内に、見通せる範囲で新規事業等に取り組むのが一般的だと思います。
一方で、大企業は、中小企業に比べて、財務的にも人財的にも余力があります。そこで大企業が是非やるべき研究開発、それは基礎研究です。戦後、日本は高度経済成長の中で、国も、大学も、そして企業が率先して基礎研究をしていました。その基礎研究は、目先には何にも利益にはならないけれども、長期的には世の中を変えるような研究でした。しかし現代の基礎研究はお金がかかります。研究スペース、研究装置。・設備、加速器や巨大な望遠鏡、分析・解析装置、計算速度の速いパソコン等基礎研究を行うにも多額の費用が必要となります。日本自体に経済的余裕がなくなり、国も科研費も、直ぐに商品化・実用化できる研究には集中的出すものの、実用化できるか分からない基礎研究には予算をつぎ込めない状況になっています。
しかしこれらの基礎研究が日本を豊かにしてきたことは間違いありません。将来応用ができるかもしれない、できないかもしれない基礎研究を続けることこそが、日本という国を支えていくことにもなるのだと思います。
この点で、大企業の責務は大きいと思います。大企業こそ、社員の数パーセントを基礎研究にあてがうべきだと思うのです。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)
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