6次産業の重要性

日本の食料自給率は、令和5年度において、カロリーベースでは38%、生産額ベースでは61%となっています。日本人の1人1日当たりの供給熱量が2,203Kcalとして計算すると国内産物からは約840Kcal前後、残りは輸入食材からとっていることになります。

 一方で、日本国内でどの程度の潜在生産能力があるかの統計では、コメ・小麦中心の作付けとした場合には、供給可能熱量は1人1日当たり1,752Kcalにしかなりません。一方でコメ・小麦の作付けを大幅に減らし、いも類中心の作付けにすると、2,362Kcalとされています(農林水産省HPより)。つまり将来、農林水産物を国内だけでまかなうためには、コメ・小麦を大幅に減らし、50%以上のカロリーをいも類から摂取する生活にシフトするしかないことを示しています。

 なかなか厳しい想定です。これを打破すべく国は昨年、食料・農業・農村基本法を大幅に改正し、⑴食料の安定供給の確保、⑵農業の有する多面的機能の発揮、⑶農業の持続的な発展、⑷その基盤としての農村の振興を理念として掲げ、基本方針を示しています。

 しかし法律を変えただけでは、世の中は変りません。食料の供給は、国、農林水産業に携わる業種の方々及び消費者だけで何とかなるわけではありません。平賀緑さんによれば、「これまで、とくに小麦、大豆、砂糖、油脂など国内自給率が低い食材を扱う加工食品産業には、明治期の創業時から輸入原料を使って発展してきた大企業が多い」とのことです(「私たちの食は、なぜこうも不安定に、脆弱になっているのか」地平2月号2025年、P110)。したがって、簡単にこの構造を変えていくことは難しいのだと思います。

以前に法政大学大学院にて、坂本光司先生の授業に聴講生として参加したことがありました。その際、坂本先生は統計データを利用し、日本の農産物の自給率が低いこと、一方で一部の農産物については海外に輸出しているケースもあること、地域により特徴があること、また消費者も年齢、性別等により食事の嗜好が異なることなどを具体的に教えて頂きました。その際に、国内農林水産業の発展の可能性として、坂本先生は、「6次産業」に注目していました。今、6次産業に関わっている事業社の多くは中小企業です。例えば、第9回人をたいせつにする会社審査員特別賞を受賞した有限会社ココ・ファーム・ワイナリーもその一例です。

日本の農林水産業の持続的な発展は、6次産業を担う中小企業にかかっています。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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