両立支援等助成金だけでは解決しない

厚生労働省は、両立支援等助成金として、令和6年より介護離職防止支援コースにつき、休業取得時30万円、職場復帰時30万円等の助成金や支援制度策定、運用等の助成金の他に、業務代替支援加算を制度化しました。

この業務代替支援加算制度とは介護休業期間中に代替要員を新規雇用等した場合(新規雇用)または、代替要員は確保しないけれども周囲の社員に手当を支給して業務を代替させた場合(手当支給等)に、介護休業取得者5日以上の介護休業をとった場合で、職場復帰した際には、新規雇用20万円、手当支給等5万円の助成金を出すという仕組みです。

2025年、この業務代替支援加算制度に、介護休業取得者が15日以上、介護休業をとった場合には、復帰後に新規雇用は30万円、手当支給等には10万円の助成金を出すということで改正をするとのことです。

現在、介護離職は10万人を超えると言われています。そのための施策として整備された助成金です。25年度予算では、中小企業への助成金として11.9億円を計上しているとのことです。

一方で、東京商工リサーチによると、2024年1月から11月1日までに倒産した介護事業者は、全国で144件となり、2023年の143件を上回り、最多となっています。また事業を停止した休廃業・解散612件となり、介護事業からの撤退は合計で784件となります。倒産の内訳は、訪問介護71件、デイサービスなどの通所・短期入所48件、有料老人ホーム11件となっています。

倒産の原因は、人手不足がもっとも大きな要員ですが、そもそもなり手がいないというだけでなく、国内全体の賃金相場が常用していることもあります。さらに、物価高騰に対して対応出来ていないという点も見逃せません。介護事業の収入は、基本的に介護保険による介護報酬に基づいています。物価上昇しても介護報酬の改定がなければ、財務を圧迫することは目に見えています。

社員が介護休業をとったとしても、これらの介護施設や介護サービスが充実していなければ、介護休業後に社員が会社に戻ることもできません。

中小企業への助成金だけでは、介護離職の抜本的な解決にはなりません。

介護離職の解決のためには、国民一人一人が、そして企業一社一社が、日本の介護制度全体の問題を解決していく姿勢が必要とされていると思います。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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