社員を守る

1月31日の日経新聞デジタル版に「「接待セクハラ」、企業に責任、労働法で対応義務」との記事がでていました。フジテレビの問題を受けた記事です。この記事には、「従業員をセクハラから守るという姿勢を普段から内外に示すことが重要だ」との指摘がありました。接待などの場において、セクハラ等のハラスメントを行った人、いわば加害者が責任を負い、これが接待など仕事の場であれば、加害者側の会社が責任を負うのは当たり前のことです。

 一方で被害者側の企業は何も責任がないかというと、法的には、従業員が心身ともに安全に働けるよう環境を確保する義務(労働契約法5条)、セクハラ防止や事後対応を行う義務(男女雇用均等法11条)などの義務違反が問われることもあります。また当該被害者の社員がハラスメントにより何らかの損害(PTSDなどの精神疾患も含む)を受けた場合には、被害者側の会社にも安全配慮義務違反として損害を賠償する責任が生じる可能性があります。

 そのようにならないために、従業員を会社が守るという「姿勢を内外に示す」ことが重要だということだそうです。確かに、接待等の宴席の場面で、取引先や会社にとって重要な顧客である先方がハラスメントを行う場合に、その場で関係性を損なわないように上手に対応することはとても難しいことだと思います。

 そのような場合に、会社が社員を守る姿勢を内外に示していれば、「ご存じのように、我が社では、このようなことは禁止されていますので」等と対応もしやすいかもしれません。

 「社員を大切にする」と内外に明言している会社では、自ずと会社外の人に対しても、理不尽な対応をさせないように、社員を守っている、とも言えるのだと思います。社員を大切にすることによる副次的な効果と言えるかもしれません。

経営者は、社員を守るためにも、社員を大切にしているというということを社内だけでなく、社外にも対しても、日々、堂々と宣言していることが必要なのだと思うのです。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です