情報管理の重要性

もうかなり以前のことになりますが、顧問先から契約書のリーガルチェックの依頼を受けました。顧問先の取引相手は大手企業であり、先方の顧問弁護士から案が送られてきました。それはワード文書で送付されてきたのですが、たまたま文書情報を確認したところ、その契約書の作成者名は、取引相手の企業でもなく、先方の顧問弁護士の事務所のものでもなく、全く別の会社の法務部の名前が記載されていました。たぶん、先方の会社か顧問弁護士の事務所かが、別の会社が作成した契約書を変更して送ってきたのだろうということが分かってしまいました。

 類似している記事だと思いますが、2025年4月30日付け日経電子版に「転職前に使っていた『便利なエクセル関数』、安易な利用は違法リスク」との記事がありました。

 転職前のエクセル表、便利だと思い、社員が自分のPCにダウンロードして、そのエクセル表を使って転職後に別の仕事に流用した場合、場合によっては秘密情報の漏洩と判断されるリスクがあります。秘密情報漏洩については、場合によっては刑事罰が科せられることもあるので、とても怖い状況ですが、一般には比較的安易にデータ等を利用しているケースが見受けられます。

 確かにエクセル表や前述した契約書は、よほど特殊な場合を除いては著作権の侵害には当たりません。しかし、記載内容が流出すれば、秘密情報漏洩には該当してしまいます。

 社員が、社内残業ができず、自宅に帰って企画書や営業分析シート等を作成する場面は、よくテレビドラマとかで見かけますが、これはとても危険なことです。情報を漏洩される会社にとっても危険ですが、嫌疑をかけられる社員にとっても危険です。

 情報管理を厳格に行うことは、会社の利益を守るだけでなく、社員も守ることになります。是非一度、社内で情報管理体制を見直すことをお勧めいたします。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田 勝彦)

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