時間単位の休暇について
人を大切にする経営学会では、時間単位の年休制度の構築を推奨している。
当社でも2024年から就業規則に定めた。
この制度を導入するのにあたって、当初は、当社での導入は難しいと思っていた。
当社は、客先での現場作業が中心のため、朝一斉に作業車両で現場に向かう。
当社に限らず、建設、土木などの現場作業での時間単位の有給取得は
難しいというのが一般的な固定観念だ。
そのため、社員は8時間勤務ができなければ、
1日単位で有給休暇を取らなければならない。
しかし、社会全体の労働力不足や社員の高齢化を考えると、
現場作業でも柔軟な働き方の仕組みを導入していく事が
今後の人財不足に対応していく事だと最近思う。
以前に視察を行った女性が多く勤めている工場で、
「自社の良いところは何ですか?」というアンケートを取ったところ、
「子供が急に熱が出た時に、当日でも休みやすい制度や職場の皆が
助け合って仕事をする雰囲気がある」
という結果があった。
誰だって急に休めば、一緒に働いている人に
少なからず影響が出る事くらい分かっている。
どうしようもない理由があって、
頻繁に時間休暇を取らなければならない事もある。
中小企業の給与は、大手企業のそれと比較して低いという現実がある。
それを補うためにも、中小企業には休暇の制度や仕組み、
お互い様の職場雰囲気をつくる事が求められていると思う。
時間休制度を導入した昨年の話である。
ぎっくり腰になった社員がいた。
整形外科の先生からは週2回16時までに通院して、
リハビリ3カ月と診断された。
こんな話はよくある事だ。
当社の終業時間は17時なので15時に仕事を切り上げて、
1日2時間の早退(時間休)を取る事になった。
週2回2時間の時間休を取得すれば2週間で4時間。4週で16時間、
結果として、3カ月で48時間の時間休暇を取得した。
休暇処理は、付与した有給休暇日数を時間換算して全て時間休暇処理をした。
ところが、先日、あるきっかけで、当社の就業規則の記載に目が止まった。
就業規則には
「社員は1年度に5日(40時間)の範囲で時間単位の有給休暇の取得ができる」
となっていた。
私は有給休暇の範囲内ならば、
無制限に時間休の取得ができるものと勘違いしていた。
労務士の先生にお聞きすると、5時間は法律の定めによるものだというのだ。
5日以上は法律上付与ができないという事がわかった。
もし5日間を超えれば、
法律上は半休か1日単位の休暇取得をするのが正解らしい。
そもそも、政府が時間休暇(5日、40時間)を法で定めたのは、
有給休暇取得の促進のための法律。
40時間では現実的に足りない感じがする。
今後も自分の用事、親の介護で少し遅れる、
少し早く帰りたいという社員もいるはず。
例えば、週1回1時間、親、家族、自分の用事があったとしたら、
年間52週で52時間が必要となり、時間休の法制限の40時間を超えてしまう。
そこでさらに調べてみると、朗報があった。
政府は、規制改革推進会議で、時間単位で取得できる年次有給休暇の上限を、
現在の年5日以内から年休付与日数全体の50%迄まで緩和し、
取得できる時間数を増やす方向で検討しているという記事があった。
つまり年休20日の付与ならば10日分(80時間)の
時間休暇の付与という事になるらしい。
2025年度内に結論が出されるようだ。
当社では、リモートワークも未だ導入できてない。
時間休暇も含めて有給休暇の取得率向上の背景に、
誰かが休んだら仕事が止まる、
回らないという大きな問題があるのではないか。
休みやすい職場制度の整備、休暇時の仕組作り、
職場の雰囲気作りなど、社員の確保と定着に対しては、
早急に手を打たなければならない。
こんな時に他の会社の取組を聞きたくなる。
当学会では、8月26日(火)に、
人を大切にする経営学会の全国大会が
慶応大学三田キャンパスで開催する予定になっている。
当日は、今年度、第15回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を
受賞した23社が登壇し、人を大切にする経営の先進事例の発表が行われる。
是非、足を運んで自社の経営の参考にしてください。
参考)人を大切にする経営用語辞典 「時間有給休暇制度」 P263
人を大切にする経営学会会事務局次長 石川 勝
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