学会の存在意義と2つの学び
「学会とは、特定の学問分野の研究者が集まって、研究成果を発表し、議論する場、あるいは、そのための組織・団体と一般的には定義されている。研究者間の交流や情報交換、学術の発展が目的である」
と言われています。
2014年9月23日人を大切にする経営学会が設立されました。設立に先立って法政大学大学院政策創造研究科があった市ヶ谷(当時、リーガルビル内にあり、現在は廃校)から、100メートルも離れていないファミレスのガストにおいて、坂本学会長と現在、当時の株式会社エイチ・ユー(法政大学総合管理会社)の白石史郎さんと一緒に構想を話し合ったことは、人を大切にする経営学会10年史に書いた通りです。
その際、学会の在り方について、交わされた会話を鮮明に覚えています。
冒頭のように、学会の定義にあるような学者のための団体であればつくる意味がないとして、「学ぶ人の会」を総じて学会としよう。さらに、学者中心の学会のように大学院卒といった入会条件は設けない・・・・といったことが確認されました。
なぜかと言えば、当時、政策創造研究科の学生には、70歳を超えて大学院に静岡からわざわざ東京まで来て学ぶ社会人学生の大先輩がいたからです。こうした大先輩が学び続けるような場があった方がいいと思い、カッコいいと思いました。
Live as if you were to die tomorrow. 明日死ぬと思って生きなさい
Learn as if you were to live forever. 永遠に生きると思って学びなさい
毎日を全力で生きること、学び続けることの重要性、日々の生活において努力と情熱を持って生きること知識と理解を深めるために絶えず学び続けること、1回だけの人生の充実度を高めることができるといったガンジーの言葉です。
まさに「学ぶ人の会=学会」の思想そのままだと思いました。そして、あっという間に10周年が過ぎ、既に11年目になっています。
私は、今でも、こうしたアンチテーゼ(旧来の学会への対立命題)は間違っていないと思っています。
「学び」には二つあります。
一つは、「知らないことを知る学び」です。こうした学びは、いくつになっても、ガンジーが言うように、私たちに新しい発見と喜びをもたらしてくれるからです。
もう一つは、「問い直しの学び」です。
当たり前、常識に対する問い直しです。本当にそうだろうか?と自分なりに考えてみる学びは、他からの受け身ではなく自発的、能動的、積極的です。これは、坂本学会長が話されることも例外ではありません。まして、私の話は、人から見たら問い直さなければならない内容が多いでしょう。
誰の主張についても、「批判的批評」をもって「問い直しの学び」が必要だと考えます。
批判的批評とは、単に何かを否定したり非難したりするのではなく、より深い理解と考察を目的として、対象物や情報を多角的に検討し、その妥当性や論理性を客観的に評価する行為です。批判的批評は、鵜呑みにせず、疑問を持ち、根拠を検証することで、的確な判断を下すための思考プロセスであり、客観的な視点と論理的な考察が重要になります。
私は、誰もが思い込みを持たずに人の話を受入れ、且つ、批判的批評の精神で議論することが尊いと考え、先日の理事会で地域の支部会だけでなくテーマ毎の研究部会の活性化を提案しました。
自分自身も多少、「問い直しの学び」を意識して、人を大切にする経営学会人財塾での登壇の際には、毎年、自分自身として「問い直しの学び」のテーマは何かを考えて担当してきました。
2020年 いい会社とは何か
2021年 社員幸福とは何か
2022年 ダイバシティ―マネジメントの意義
2023年 成長と環境変化と組織変革
2024年 昭和のリーダーシップと令和のリーダーシップ
今年2025年は、人的資源管理についてのテーマで「問い直しの学び」を私なりに整理して話をする予定です。
坂本学会長は、「年功序列がいい。成果による評価はほどほどに」と言われます。世の中は、少し前に話題になったジョブ型がこれからの主流という学者コンサルタントもいます。
こうした意見を最初から拒否するのではなく、その真意を受け入れた上で、私の持論である「あらゆるものには前提がある。人的資源管理の前提は何か」を問い直してお話をしたいと思います。
過去、年功序列、職能資格制度、成果主義、役割グレード、ジョブ型等、様々な人事制度を先人が提案し導入されてきました。しかし、こうした形から入るのではなく、まずは、社会背景、人事理念、業界の特質、規模、その他の前提がない中での表面的な検討では、期待される効果が生まれないと思います。
今回のテーマに限らず、それぞれの関心分野で、興味がある方と一緒に議論ができる場が、学会人財塾だけでなく、研究部会で生まれればいいな~と思います。 藤井 正隆
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