メンタル疾患後の復職

6月22日付け日経新聞電子版に「メンタル疾患、復職にハードル 主治医が容認でも産業医は慎重」との記事がありました。

 最近は、休職後復職の対応に関与したり、相談を受けたりすることが増えてきました。

 特にメンタル疾患、適応障害、うつ病等の場の対応は難しいものがあります。

 精神科に精通された医師を産業医としている会社は余り多くありません。そのため本人の主治医から職場復帰可能との診断書を提示して職場復帰をしたものの、直ぐにまた調子が悪くなり、休職を繰り返すケースもあります。

 メンタル関係のクリニックなどの医師は、基本的に本人の主訴を前提として診断をします。また患者が働いている職場や職務内容を詳しくヒヤリングをする医師はまれで、多くの場合、大雑把な把握しかしてくれていません。

そのような中で、本人が職場復帰は大丈夫そうだといえば、主治医は職場復帰可能の診断書を出してくれます。つまり診断書だけでは、実は本当に復帰できるのかは判然としないケースがあるのです。このような場合、私は本人の了解を得て、主治医と面談をさせてもらいます。また会社の上司に主治医と面談をしてもらうこともあります。本人の了解を得られれば、概ね主治医は面談に応じてくれます。

面談では、これまでの治療経過を聞くと共に、会社側から、会社の職場状況や本人の業務内容を丁寧に説明した上で、職場復帰と判断された根拠を確認します。更に再発の可能性、職場復帰にあたって会社として注意すべき事項も確認します。

そしてこれらの情報と共に、改めて本人に産業医の診察を受けてもらいます。

本人は、会社がこのような手続きをとることについて、自分を辞めさせようとしているのではないか等の疑いを抱く可能性もありますので、会社がしっかり本人の病状を把握することが重要であることを本人に説明しておくことも大切です。

疾患を繰り返すことは本人にとってつらいことです。一方で、会社も法律的には本人が就業によって疾患を生じないよう安全配慮義務があります。どちらにとっても、休職明けの職場復帰にあたっては、慎重な対応をすることが望ましいと考えます。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です