ハラスメント防止の肝は会社の風土
厚労省では、3年毎に「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表しています。直近の調査は令和5年度であり、次回は令和8年度となります。
令和5年度の調査では、過去3年間の相談件数及び企業はその相談の内、ハラスメントを認定した割合が出ています。
相談件数では、パワハラは調査対象企業の内、64.2%、,セクハラは39.5%、マタハラは3.9%、カスハラは27.9%といずれも令和2年よりも増加しています。
その内の企業がハラスメントと認定した割合は、パワハラは73.0%、セクハラは80.9%、マタハラは50.1%、カスハラは86.8%と、マタハラを除くと、相談件数の内、概ね70~80%は実際に企業がハラスメントと認定したことになります。いずれも3年前よりも増加傾向にありますが、これは事案が増えたというよりも、これまでもあった潜在的なハラスメントが相談しやすくなり表に出てきたと考えていいと思います。
ところで、この調査では、他にパワハラが生じた企業の特徴についてのアンケートもとっています。こちらの結果は参考になります。
パワハラのある会社とパワハラのない会社で比較した場合、大きな差が認められる特徴は次のとおりです。
*上司と部下とのコミュニケーションが少ない、又はない
*残業が多い、休暇を取りずづらい
*業績が低下している又は低調である
*従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的にある
*他部署や外部との交流が少ない
*人手が常に不足している
ハラスメントが生じるのは、その人個人の特性であるように思われる面があります。しかし、厚労省の調査結果をみると、個人の特性より、会社の在り方、会社の風土が大きく影響していることが分かります。
ハラスメントを防止する最も効果的な方策は、人を大切にし、風土をよくして、その結果業績を上げることだといえます。
(参考)厚労書「令和5年度厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(PwCコンサルティング合同会社)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001541299.pdf
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)
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