人を大切にする経営学会は、法律よりもいつも先行

これまで下請法と呼ばれていた法律が改正されて、法律名も変わり2026年1月1日から施行されます。

 まず法律の名称です。慣れ親しんできた「下請代金支払遅滞等防止法」は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」という名称になります。

 また「下請代金」は「製造委託等代金」、「親事業者」は、「委託事業者」、「下請事業者」は、「中小受託事業者」に変ります。

 さらに従業員基準が追加されて規制及び保護の対象が拡充され、特定運送委託も追加されました。

 委託事業者(旧親事業者)には、4つの義務と11の遵守事項が課せられます。

義務としては、①発注内容等を明示する義務、②書類等を作成・保存する義務、③支払期日を定める義務、④遅延利息(年利14.6%と高利子!)を支払う義務です。14の遵守義務は、これまでと基本的には変りませんが、価格協議の求めがあったのに応じないことや説明を行わず一方的に代金を決定すること禁止されています。

 2025年10月22日、日経新聞デジタル版では、経産省が、約100社に対して、調達価格に転嫁不十分であるとの理由で注意を行ったとの記事が出ていました。

 これは2025年4月~5月に中小受託事業者(下請事業者)を調査し、原材料費の上昇などを踏まえた価格交渉ができているか、発注側が価格転嫁に応じているかの点を確認した結果です。いわば、改正法の先取りをして調査を行ったことになります。

 行政指導をするには省内の手続き的にも時間がかかります。そこで行政指導の前段階として、注意を行い、それでも改善されない場合に行政指導を行うという二段階の対応をすることにより、発注企業有意の商慣習を是正しようとする試みです。

 人を大切する経営では、協力会社との間で「お互いに支え合い繁栄すること」を求め(人を大切にする経営額用語事典「共存共栄」335頁)、発注側企業は、発注側である仕入先・協力企業がパートナーであり、社外社員であるという意識を持ち、共存共栄することを目指すことが重要である。人を大切にする企業の大半は、発注側から提示された価格を尊重し値決めをしているとともに、一度決まった価格をさらにコストダウンするような発注をしていない。」(同「コストダウン」341,342頁)としています。

 人を大切にする経営学会は、いつも法律より先に進んでいます!

  (学会 法務部会 常任理事  弁護士 山田勝彦)

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