旧警備業法違憲判決に思う
11月17日、最高裁判所大法廷は、旧警備業法が成年後見制度利用者の就業を認めないとしていた規定について、職業選択の自由や法の下の平等を保障する憲法に反するとした判決を出しました。
1人の勇気ある人が声を上げたことによる成果です。この方は、2017年3月に軽度の知的障がいを理由として保佐開始決定がなされたことを理由に勤めていた警備会社を退職することとなりました。
警備業法は、1982年に法改正をし、「成年被後見人若しくは被保佐人」は警備業を営んではならないと規定されました。その後2019年「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により、この規定は削除されました。したがって今はこのような法律はありませんが、この方は、2019年の改正前に退職を余儀なくされたことから国を相手にして憲法違反の裁判を戦ってきたのです。今回の最高裁の裁判により、改正前の「成年被後見人若しくは被保佐人」は警備業を営んではならないとの規定が、当時、憲法違反であると判断されたことになります。
「障害者権利条約」8条1項(b)(未だに「障害者」との文字を使っていることには抵抗を感じますが)は、意識の向上として、「締約国は、次のことのための即時の、効果的かつ適当な措置をとることを約束する。」として、(b)「あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものも含む。)と戦うこと」と規定されています。
成年被後見人若しくは被保佐人は、警備業を営めないという規定は、まさに「定型化された観念、偏見」だったことになります。
昨年(2024)4月から企業に合理的配慮が義務化されています。文科省の説明では、「合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、・・・双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。」としています。
定型的、レッテル的な安易な類型化により障がいを理解するのではなく、個別的に、「人」として対応することが求められています。
今回の判決は、改めて「人」としての権利の重要性を確認する機会になるといいと思います。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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