ジョブ型雇用でも解雇回避の義務がある

「ジョブ型雇用」という言葉が最近は時々聞かれるようになった。しかし日本の労働法は、そもそもジョブ型雇用を前提としておらず、伝統的な年功序列のメンバーシップ雇用を前提としています。そのため裁判の判断にもメンバーシップ型雇用の観点が影響を与えています。

 2025年11月21日の日経新聞デジタル版に、ジョブ型雇用の解雇が有効と判断された記事が載っていました。

 この記事によれば、当該社員は、銀行において円金利情報など日本経済を分析する専門職として「特別嘱託」として3000万円の年収を得ていたそうです。

 裁判では、解雇において、特にジョブ型雇用の場合、その雇用が「職務限定雇用」であるかがまず問われます。一般的なメンバーシップ型雇用では、職務が限定されていないため、会社には解雇回避義務として他職務への異動を検討することが求められます。しかし、職務限定雇用であれば、その職務がなくなれば、他職務への異動は想定されていないこととなります。

 この裁判例(高等裁判所)では、当該社員は職務限定雇用と認められたものの、企業には解雇回避義務はあるとしました。つまり職務限定雇用であっても、「個別同意なしに配置転換はできないが、解雇で受ける不利益の程度などからすれば、配転を打診するなどの解雇回避努力を行うのが相当」であるとしました。

 一方で、当該部署、当該業務を会社が廃止する場合には、職務限定雇用においては解雇が認められやすくなるとの判断が出されました。

 つまり、当該部署や当該業務の廃止は、解雇を認められやすくする要素となるものの、その場合であっても他部署や他業務へ異動することの打診をして、解雇回避はしなければならないということになります。

 このような判断は、勤務地限定社員であったり、時間限定社員である場合でも該当することになると思います。

 大切なことは、仮にジョブ型雇用であっても、会社は単に解雇を選択するのではなく、その人の能力を社会に活かせるよう解雇回避の努力をしなければならないということです。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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