主に「人を大切にする経営学会」会員向けの案内です。
主に「人を大切にする経営学会」会員向けの案内です。
Ⅰ.
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「人を大切にする経営学会のこれからの活動を考える」(その2)
〜日本経営倫理学会の活動紹介〜
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人を大切にする経営学会 副会長 中野 千秋
麗沢大学経済学部 教授
本メルマガ第51号(2015年10月23日)で、「人を大切にする経営学会のこれからの活動を考える」というタイトルで、第2回全国大会(2日目)パネル・ディスカッション報告の内容について、思うところを書かせていただきました。
今回は、「人を大切にする経営学会のこれからの活動を考える」(その2)として、「日本経営倫理学会」の活動を紹介しながら、当学会の今後について考えてみたいと思います。
「日本経営倫理学会」は、1993年4月に設立されました。まだ、日本の産業界でビジネスエシックスへの関心がそれほど高まっていない頃でした。神奈川大学の水谷雅一教授(当時)を中心に産学両界の有志が集った「経営倫理を考える会」(1991年発足)が母体となったのですが、1993年の学会設立時の会員は、20数名にすぎなかったと聞いて居ます。そのことを知っていた私は、「人を大切にする経営学会」が設立時に、すでに470名余りの会員(法人会員も含む)がいたことを聞いてビックリしました。「人を大切にする経営学会」に対する期待がいかに大きいかを再確認した瞬間でした。
「日本経営倫理学会」は、その後も順調に活動を進め、設立して20数年たった現在は450名程度の会員を擁するようになりました。そのうち、約半数が大学教員をはじめとする研究者、残りの半数が実務家。産学両界の会員を擁する点では、「人を大切にする経営学会」と共通する部分があります。研究者と実務家が交流・協力して十分にシナジーを発揮するために、「人を大切にする経営学会」は、今後はもっと研究者の会員を増やして行く必要があると思います。
そもそも学会というのは、学術研究に資する団体でなければなりません。そういう意味では、「日本経営倫理学会」は設立当初から、研究発表大会を実施し、そこで発表された論文を中心に『日本経営倫理学会誌』という学会誌を発行してきました。第1号は1994年3月に発行され、そこには9編の論稿が掲載されています。会員が少ないながらも、発足以来、毎年学会誌を発行してきた「日本経営倫理学会」は立派だと思います。ただし、学会誌を発行し始めてから数年間の学会誌掲載論文のクオリティは玉石混淆でした。
せっかく論文を投稿してくれたのだから、応募論文はできるだけ掲載しようという方針が取られて来たためです。しかし、学会誌を発行し続けて行く中で、掲載論文のクオリティも次第に高くなり、今ではどこに出しても恥ずかしくない学会誌となって来たと自負しています(ちなみに、私は現在「日本経営倫理学会」の副会長と論文審査・学会誌編集委員長を務めさせていただいています)。
今回(8月27日)の「人を大切にする経営学会」第3回年次総会にて、学会誌を年1回発刊すること、また人を大切にする経営学等に関する著作や論文を顕彰する制度の実施が提案・承認されましたが、これは学会として大変喜ばしいことだと思います。その実施・運用に際して、「日本経営倫理学会」のやり方も一部参考にして良いのではないかと思っています。
また、「日本経営倫理学会」では、設立後間もない頃から、会員の研究活動を奨励することを目的に「研究部会」を発足させ、学会から若干の部会活動補助も行なっています。現在は以下6つの研究部会と2つの地区研究部会があります。
(1)理念・哲学研究部会
(2)企業行動研究部会
(3)ガバナンス研究部会
(4)実証調査研究部会
(5)CSR研究部会
(6)経営倫理教育研究部会
(7)関西地区研究部会
(8)中部地区研究部会
こうした研究部会活動の成果が、本の出版や論文の発表につながっていることも少なくありません。
「人を大切にする経営学会」の研究活動としては、北海道、四国、関西、中部、中国など、5つの地区部会を発足し(一部は発足予定し)、主として地域単位での活動を行なっていく方針が取られています。当学会の性格上、これは正しい方針だと思います。地区部会の活動がますます活発に行なわれることが期待されます。また、今回(8月27日)の年次総会において、当学会の新規事業として、各種研究プロジェクトを設置開催し、それに100万円の予算を計上することも提案・承認されました。きっと立派な研究成果が得られるものと、これも今から楽しみです。
また、「日本経営倫理学会」では、年に数回、研究交流例会というのを実施し、学会内外から報告者を招いて、さまざまなトピックに関して、情報共有や意見交換をしています。こうした研究部会や研究交流例会を行なうことによって、年1回の大会以外にも、日常的に会員が相互に交流・議論する機会をもつことも、「人を大切にする経営学会」の研究活動を活性化していく上で、大変参考になると思います。
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞のホームページに、「正しいことを、正しく行っている企業を表彰します」というメッセージが示されています。「正しいことを、正しく行っている企業」という点において、そのアプローチの仕方に違いがあるとはいえ、「人を大切にする経営学会」と「日本経営倫理学会」の理念には相通じる部分があると思います。今後チャンスがあれば、両学会で共同のシンポジウムを行なうなど、学術交流の機会などを探ってみるのも良いのではないかと思う次第です。(了)
Ⅱ.
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第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の募集のご案内
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現在、第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の応募を受付けいたしております。
応募書類のダウンロードおよびエントリーは下記URLよりお願いいたします。
http://goo.gl/fP9TCR
第7回でも第6回までと同様に「正しいことを、正しく行っている企業」を表彰いたします。
人を大切にする経営を実践する企業を全国から発掘して、取材し、各種メディア媒体を使って幅広く紹介していくことは、人を大切にする経営の実践企業を増やすことの一助になります。
会員の皆様からの、積極的なご応募やご推薦をお待ちいたしております。
なお、表彰式は来年3月21日(火)に開催予定でございます。会場は、第6回と同様、法政大学市ヶ谷キャンパス・さったホールでございます。
あらかじめご予定をいただけますと幸いです。
Ⅲ.
『「いい会社」のつくり方-人と社会を大切にする経営』(WAVE出版)が紹介されました。
一読していただければ幸いです。
(「いい会社」をつくる具体的な方法とはなんだろうか。ビジネスパーソンは会社に不満を持ちながらも会社をよくしたいと思っているものだ。そのためのハウツー本は出版されているが決定的な決め手がなく、あるいは総合的な解決法がなく、今日に至っている。
■いい会社とはなにか
「人を大切にする経営学会」理事であり、(株)イマージョン代表の藤井正隆(以下、藤井)氏は、会社の問題で最後に残るのは人に関係することだと述べている。今回は、いい会社をつくるためのヒントについて伺った。
最近、「いい会社」に注目が集まっているそうだ。終戦以降の経済成長期には、安定・成長を保証するという意味で「大きな会社」とほぼ同義語として使われてきた。バブル崩壊以降はリストラが急増し、大企業に入っても将来が保証されなくなった。大企業は正社員の非正社員化を進め「派遣切り」が問題になり、その後、「ブラック企業」が登場する。
「ホワイト企業も存在しますが、これは必ずしも『いい会社』とイコールではありません。2014年に『東洋経済ホワイト企業ランキング』で第一位に輝いたのは東芝でした。ですが、翌年、不正会計が発覚しています。」(藤井)
「ホワイト企業ランキングは、多くの評価項目を設定しているのに、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。いくら制度を整えて問題に取り組んでも、『重要なこと』が抜けているような気がします。」(同)
この「重要なこと」の一つとして藤井は経営理念を挙げている。社員の働く意義を明文化し、行動や判断の価値基準を明確化する経営理念は極めて重要だという。
■会社の礎は経営理念にある
いま経営理念の意義について改めて注目が集まっている。藤井によれば、それには大きく2つの流れがあるそうだ。1つは「企業不祥事」である。東芝の不正会計処理、旭化成建材の杭打ち不足、東洋ゴム工業の免震ゴムの偽装など、日本を代表する企業のトップが記者会見で頭を下げる光景を頻繁に目にする。
「コンプライアンスの重要性が叫ばれていますが、不祥事が無くならないなかで、経営理念はガバナンス(企業統治)における手段として考えられています。」(藤井)
2つ目が「ダイバーシティマネジメント」である。働く人は多種多様になり、女性の社会進出、労働人口減少に伴うジェネレーションギャップが発生している。個々の価値観の違いはあっても、企業のセントラルバリューは共通認識にする必要性があるとのことだ。
「私は、毎年100社以上の企業訪問研究から『いい会社』ほど経営理念は経営管理上、効果的な役割を果たしていることを確信しています。しかし、経営理念が共有化されていない企業では、働く意義や一体感を実感しにくいかも知れません。」(藤井)
また、経営理念に高邁なことが掲げられているほど、企業活動とのギャップが発生してしまう。具体的には次のようなことを指す。
「お客様満足と経営理念に書かれていても、日々売上のことばかりを言われていれば、社員にお客様満足は根付きません。所詮は表向きの表現だと捉えるのは当然です。」(藤井)
■どのような経営理念をつくるか
100社あれば100社の経営理念が存在する。短いものもあれば長文のものもある。表現についても抽象的なものから具体的なものまである。経営理念策定にルールがあるわけではない。そして、どんな経営理念が良いとか悪いとか簡単に評価することもできない。しかし、あえて良い経営理念を考えるなら、次の視点で考えてもらいたいと藤井は述べる。
「ストーリーがあり経営者の腹から込み上げる思いがあること。関係者が共感共鳴することも大切です。例えば、借り物でない自分の言葉で語ることで広く関係者に共有化されます。経営理念は人と切り離すことができないものであり、テクニック論を超えた重要なものであると考えることができます。」(藤井)
法人は自然人に倣ったもの。だから人間らしさを追究していくという単純明快な道筋の中で創意工夫を凝らせば、会社がよくなる方法は自ずと導き出されるはずである。最後に、藤井のメッセージを引用して結びとしたい。
「企業理念や創業者精神に立ち返ってみると、なにかしら人の心に訴えるものがあります。同じ場所で、同じ時間に同じことを共有し思いを共にすることは大切です。そして、経営理念が共有化されて理解が深まれば、会社の生産性が高まります。」(藤井)
最後に、藤井が8月に上梓した書籍を紹介したい。本書は経営者やビジネスパーソンのため、理論に実践的研究を積み上げた具体的方法が掲載されている。経営陣や経営管理部門に所属する人はもちろん、多くのビジネスパーソンにも参考になることだろう。
参考書籍
『「いい会社」のつくり方-人と社会を大切にする経営』(WAVE出版)(http://amzn.to/2cF8lbi)
尾藤克之
コラムニスト
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