日本で一番大切にしたい会社

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日本で一番大切にしたい会社
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               人を大切にする経営学会 常任理事 渡辺 幸義
                 株式会社アイエスエフネット 代表取締役 

株式会社アイエスエフネットは、IT会社として2000年1月に4人から
スタートいたしました。当時は、IT企業の拠点のイメージとは程遠い、浅草橋に
事務所を構えたこともあり、当然のことながら人はあまり集まりませんでした。

様々な方法を試し、最終的に、『無知識・未経験者募集』というメッセージを
募集広告に掲載したことで、多くの就労困難者が集まるようになりました。
それ以来、そのような方に就労のための教育トレーニングを行い、正社員化する
というモデルを確立してまいりました。

その当時、“5大採用”(1.ニート・フリーター、2.FDメンバー(障がいを
お持ちの方)、3.ワーキングプア、4.引きこもり、5.シニア の方々の採用)を
掲げ、気力・やる気を重視した採用を行っておりましたので、就職希望者のうち
の35%が何かしら就労困難な状況にあり、残り65%は異業種からの転職者でした。

その就労困難な理由は、大きく分けて6つあります。

1つ目は気力がないことです。
長期間引きこもっていたり就労をしていないと、気力がない、もしくは気力が
維持できず、採用面接に挑むも合格することは難しい。当グループでは、気力・
やる気を第一に考え採用しておりましたが、気力があまりないような方が多く
いらっしゃいましたので、そのような方たちのサポートをするNPO法人を立ち上げ、
気力アップや就労に向けたトレーニングを行う方法を作りました。
無気力で一番問題なのは、心の病だと思います。今の日本人の20人に1人が
(予備軍も入れると10人に1人)が心の病と言われています。この心の病が
気力の低下を招き、どこにも採用されず、引きこもりの要因の1つとなっています。
心の病は誰にでも起こりうるものです。就労環境など自分にとってストレス
になる現象が重なると、どんな人も心の病になる可能性があるのです。
社会がそのストレスをなくすような環境を作り、また各々がストレスをなくす
努力をすることが大切だと考えています。

2つ目は差別偏見によるものです。
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)、HIV・感染
症の方、犯罪歴のある方、ユニークフェースなど差別偏見にあっている方は
何百万人もいるといわれております。このような方々は過去を見て、または
現状から、他の人と違うからという差別偏見で採用されません。当グループ
では、偏見差別がなければ十分に働ける・戦力になりえると考え、雇用環境の
創造を行ってまいりました。今の日本は、何かしらの障がいがあったり、
人と違った部分がある場合、それを隠してしまいがちですが、私は、これは
とてもリスクが高いことだと考えています。子供のころから、健常者と障がい
者を分け、人と違う部分を認めず、些細な違いがあるといじめ等につながる、
このような環境も問題だと考えています。小さいころから違いを認め、
ともに成長し、またすべてのことをオープンにしたうえで個人を尊重し、
受け入れる。そういうことこそが、差別偏見がなくなることだと思います。

今現在、当グループは“30大雇用”までカテゴリーを追加し雇用の創造に
取り組んでおります。これを大きくPRをすることで、集まってくる社員は、
その取り組みに関して前向きな人、受け入れる人なので、必然的に差別偏見を
持った人達は社員として定着しません。当グループの社風という面では、
30大雇用をPRすることで環境が醸成され、様々な事情を抱えた人と仕事を
共に行うことを通じ、差別偏見の壁が取り払われたのだと思います。

3つ目は勤務時間です。
勤務時間については、時短勤務や在宅勤務、シフト制等、会社の仕組みを作る
ことで受け入れを実施してまいりました。

4つ目は勤務場所の問題です。
地元で働きたい、けれど、地元には就労場所がない、という方々が
いらっしゃいます。このような場合は、インターネット・PCを活用して、
リモートでの就労を可能にしてまいりました。

5つ目はコミュニケーションです。
とくに精神障がい、発達障がいの人に、コミュニケーションが取れない方が
多いといわれています。企業は採用の際に、面接や筆記試験を行いますが、
この面接の際に、精神障がい等のある方は理解されにくいようです。低い確率
ですが、もし面接に通ったとしても、その後就労の継続は難しいといわれています。
コミュニケーション上で難があるなどということで、誤解が生じ、意思疎通が
できないなどの問題が生じます。しかし彼らの特性を理解し、配慮や歩み寄りを
することで彼らの能力を磨き、それを十分に活かし会社の戦力になってもらう
ことは必ずできます。

最後の1つは、会社の戦力になっているかどうか、です。
これはいわゆるジェネラリスト(何でもできる人)という発想です。就労
困難者の方の中には、できること・できないことの差が激しい方がいます。
通常障がい者はできないことだけを見られ、できるところは見られず、
≪これができないから≫障がい者となっていますが、すべての方が何かしらの
高い能力をもっています。“何でも”はできないけれど、すごく得意な部分
がある、この得意な部分にフォーカスして仕事を作ることで、会社の十分な
戦力になると考えています。

上記6つの事項は、年々就労数が減っている日本において、とても重要な項目
だと思います。人がいないのではなく、働く環境を困難にしている原因を
突き止め、それを改善することこそが、新しい人材を雇用することを
可能にするのではないでしょうか?
私はこれからも、30大雇用を継続してゆきたいと思います。

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