地方創生と市民協働
毎週金曜日に「人を大切にする経営学会」の会員に送付されるメルマガの巻頭言
地方創生と市民協働
人を大切にする経営学会 理事 三村 聡
岡山大学 教授
国の地方創生政策の一環として内閣官房まち・ひと・しごと創生本部及び内閣府地方創生推進室が進める「地方創生人材支援制度」により、
岡山大学から岡山県井原市へ地域創生戦略顧問として平成27年4月1日から平成29年3月末日で派遣された。
その活動記録をたどりながら「地方創生と市民協働」について考えてみたい。
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部及び内閣府地方創生推進室が公募した「地方創生人材支援制度」により、
岡山大学から岡山県井原市へ派遣されることとなり、
平成27年3月20日、25日、26日の3日間、内閣府と官邸で開催された研修会と激励会へ参加した。
当時、石破茂地方創生担当大臣からは、「地方創生に失敗すると国家が持続できないという強い危機感を持っている。
主役は市町村であり、皆さんは、4月から順次着任し、国が来年3月末までにすべての自治体に求めている「地方版総合戦略」の作成支援などに当たり、
地域の一員となって共に汗をかいてほしい」と激が飛ばされた。
また、小泉進次郎内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官と直接意見交換できる機会を得た。
第1期生として派遣された内訳は、国家公務員42人、大学の研究者15人、民間シンクタンクの研究者12人。
井原市では「元気いばら まち・ひと・しごと創生 人口ビジョン・総合戦略」の策定に向けて、4月から「元気いばら創生戦略本部」が設置され、所管部署として地域創生課が設けられた。
また、市民の声を聴く市民協働組織として、「元気いばら創生戦略会議」を設置した。
委員は19名で、外部有識者(岡山大学)、行政機関(岡山備中県民局)、商工関係団体(井原商工会議所など)、各種団体及び公募委員で組織され、
井原市の総合戦略の策定に関して、ワークショップで課題抽出、討議を重ね、意見や提言を受けてプラン案が策定された。
すなわち井原市と市民が一体となり総合戦略策定作業を続け要諦が固まった。
従来の施策は国や自治体が決め、それを議会が審議・承認するスタイルが基本形であったものを、今回の地方創生の総合戦略策定プロセスでは、
広く市民の声を聴き、そこから抽出されたテーマを、市民代表が丁寧に拾って、取りまとめ、施策に反映するスタイルが取り入れられた。
まさに、「人を大切にする経営学会」がめざす、社員、職員、関係者、お客様中心主義の考え方が、国や自治体の方針策定プロセスでも活かされていると読み解けよう。
こうして平成28年2月17日、市民代表の委員から貴重な指摘や意見が出される中で、懸案であった「元気いばら まち ひと しごと人口ビジョン」と「元気いばら まち ひと しごと総合戦略」が満場一致で承認された。
策定された施策は、「市民協働と地方創生」をテーマに「井原市まちづくり協議会連絡会」において市民に向けて講演、
「行政の見える化」実現に基づく協働による市民の役割発揮の必要性について市民にお伝えした。
また、平成29年1月12日、地方創生には地域連携が必要との視点で進む「平成28年度高梁川流域連携中枢都市圏ビジョン懇談会」(井原市を含む7市3町)が倉敷市を会場に開催された。
小職が座長を務めるなか、高梁川流域の産業界、大学、金融機関、医療・福祉機関、地域公共交通機関、地域コミュニティの代表者(トップ)が一堂に会し積極的な意見交換がなされた。
こうした活動について、平成29年2月1日、霞ヶ関の合同庁舎4号館で開催された「地方創生人材支援制度 第6回報告会」では、
山本幸三内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)はじめ、内閣府地方創生本部幹部や約80名の派遣者に対して実績と今後の課題について述べた。
人(市民)を大切にする自治体運営が求められる時代が訪れている。
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