製造業 雇用7年ぶり1000万人回復 国内回帰が波及
昨日の日経から。
人手不足に拍車をかけていそうだ。
製造業 雇用7年ぶり1000万人回復 国内回帰が波及
2017/9/29 13:36日本経済新聞 電子版
生産拠点を海外から国内に移す企業が増え、雇用を一段と押し上げている。製造業の雇用者数は1~8月平均で1003万人と7年ぶりに大台を回復する見込み。アジアの人件費上昇や円安基調が定着してきたことが背景にあり、企業は長期的な人材確保のため国内で正社員の採用も増やしている。賃金上昇への期待から家計の心理は明るい兆しも出ており、消費を下支えする効果が広がりそうだ。
厚生労働省が29日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じ1.52倍だった。1974年2月以来の高さだ。総務省が同日発表した完全失業率は2.8%で、働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」の状態にある。
労働市場の需給を逼迫させている一因が、製造業の求人増加だ。8月の製造業の新規求人数は前年同月比11.7%増で、全体の新規求人数の伸び(6.3%)を上回った。8月の製造業の雇用者数は1002万人。2017年は、7年ぶりに1000万人を回復する公算が大きい。
自動車や半導体関連などの輸出が好調で、生産活動は持ち直している。経済産業省が29日発表した8月の鉱工業生産指数(季節調整値)は前月比2.1%上昇した。ただ雇用回復の背景にあるのは、足元の増産基調だけではない。生産拠点の国内回帰も影響している。
経済産業省によると、日本企業の海外現地法人による設備投資は今年4~6月、前年同期より10.2%減った。14年4~6月から3年以上も減少が続いている。海外での増産よりも国内への生産工程の移管を選ぶ動きがじわり広がっている。
円安傾向が定着したほか、アジアの人件費が増加基調にあるためだ。SMBC日興証券は、生産性も加味した賃金コストを示す単位労働コストでみると、中国は日本より3割高いと試算する。
JVCケンウッドは15年末に国内向けカーナビの一部をインドネシアや中国の工場から長野県伊那市の生産拠点に移管。それまではカーナビのほぼ全量を海外工場で生産していた。100円ショップ「ダイソー」を手掛ける大創産業(広島県東広島市)は「雑貨はほどんどが海外品だったが、国内品を増やしていく」と語る。
業種を問わず人手不足感が強まるなか、企業は正社員の採用に力を入れる。正社員のみの有効求人倍率は3カ月連続で1.01倍となり、求人が求職を上回った。比較可能な04年以降で最高の水準を保つ。雇用者数の伸びも正社員がけん引する。8月は正社員が前年同月より56万人増えた一方、非正規社員は18万人の増加にとどまった。
賃金水準が高い正社員の採用が増えて、パートタイム労働者からの転換などが進めば、家計の所得は増える。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野達史氏によると、家計全体の賃金収入を示す雇用者所得は、物価変動の影響を除く実質で年率3%伸びていると分析。「雇用者所得の伸びが勢いづき、消費者心理も改善しており、消費の増加が続く」と予測する。
総務省が29日発表した8月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たりの実質消費支出は前年同月比0.6%増えた。長雨で夏物商材やレジャーへの支出が落ち込むと懸念されたが、2カ月ぶりの増加となった。家電や自動車など耐久財への支出が伸びた。リーマン・ショック後の消費刺激策で購入した耐久財の買い替え需要が下支えしている可能性がある。
ただ、今のところは物価上昇を勢いづかせるほどではない。8月の全国消費者物価指数(CPI)は、値動きの激しい生鮮食品とエネルギーを除くと、前年同月比の上昇率は0.2%にとどまる。節約志向を警戒した小売り大手などの値下げで日用品や食品の価格下落が下落しているためだ。これまで物価を押し上げてきたエネルギーも、11月には全国で電気・ガス代が下がる。雇用改善や消費の復調とは別に、物価は伸び悩む状況が続きそうだ。(川手伊織)
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