尊敬する二人の編集者

商業界、笹井編集長のブログより
テーマ:倉本長治と商業界精神
2017年10月16日(月) 19時01分57秒

私には二人の尊敬する編集者がいます。

一人は「商業界」創立者、倉本長治。

そしてもう一人は「暮しの手帖」創立者、花森安治。

奇しくも両誌の創刊は同じく昭和23年(1948年)。

日本が敗戦から立ち上がり、それまで統制されていた情報を焦がれるほどに求めていた時代でした。

これは あなたの手帖です

いろいろのことが ここには書きつけてある

この中の どれか 一つ二つは

すぐ今日 あなたの暮しに役立ち

せめて どれか もう一つ二つは

すぐには役立たないように見えても

やがて こころの底ふかく沈んで

いつか あなたの暮し方を変えてしまう

そんなふうな

これは あなたの暮しの手帖です

この一文は「暮しの手帖」創刊以来、表紙裏(表2)誌面に掲げられている読者へのメッセージ。

「暮しの手帖」は広告を一切取らず、読者一人一人の購読料金によって発行し続けるという世界中を見ても稀有な事業スタイルを持つ、日本を代表する雑誌メディアです。

かたや「商業界」は、商業者は消費者に代わって商品を選び、仕入、販売するのだから、その対価として適正利潤を得るのは当然とし、 また商業者は消費者に対し公平公正であらねばならず、それが商業を成長させ、消費者の生活向上、社会の発展につながると主張し続けてきました。

これが江戸時代以来「士農工商」と卑しめられてきた商人たちに自信と勇気を与え、商業近代化の精神的原動力となったのです。

二人に共通するのは、日本人の日々の暮らしを心豊かにしていくという志です。

倉本はその対象として商人を選び、花森さんは生活者を対象としました。

対象の違いはあるけれども、その目指すところは驚くほど共通しています。

そして二人とも、何よりも現場・現実・現物をもっとも大切にしました。

真実は現場・現実・現物にある——企画、取材、執筆、編集、指導、教育、、、、数え上げれば限りないほど多忙を極めながらも、何よりも読者との接点を、この二人は大切にしていました。

まったく及ばないながら、私が現場を大切にするのは、この尊敬してやまない二人から学んでいるからにほかなりません。

お会いする商人は、月に10人だとしてもこれまでにざっと3000人。

貴重な時間を割き、取材に応じてくださる皆さま、本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です