日常的な経営者の評価の導入が必要
日本でいちばん大切にしたい会社大賞を受賞するような「いい会社」を中心に訪問していると、私自身、経営者の端くれとして、勉強になることばかりです。人を大切にするといった経営の基本としており、人間力は、もちろん、時代環境を見て適切な手を打っています。
一方、私自身も含めて、日本全体の経営者の質はどうでしょうか?こうしたことを書くと反発する方もいるかもしれませんが、あえて問題提起をしたいと思います。
1年前に読んだデービット・アトキンス氏の本での主張を端的に表現したのが、同氏がIMFの調査データを組み合わせて作図したものです、
同氏の主張によれば、
「日本の現状は、質の高い労働力を低賃金で活用できる環境にありながら、生産性が上げられたない日本の経営者のレベルが低い。働き方改革の前に、経営者改革が必要である」
というものです。アナリストである同氏らしいマクロの数字を用いた分析ですが、現場を回っての実感としても、あながち間違いではないと感じます。
最近は、社員も増えてコンサルや自社の経営の仕事を中心にし、講演活動は月に何度かを上限にしています。しかし、2010年に起業した頃は、ライフワークではなくライスワークで、まず、生活をしなければならないといったことから、週に2日平均で宣伝にもなればと全国で向いて経営者の講演を行っていました。特に、商工会議所からの依頼では、なかには電車を乗り継ぎ、片道5時間といった小さな街にも訪問しました。その講演会には、もちろん、中には、二代目三代目の若い経営者もいましたが、地方の経営者の多くは、60歳~80歳といった高齢の方ばかりでした。そして、地方に行くほど、高齢になっていると感じました。
実際、帝国データバンクの調査を見てみても、明らかに、経営者の高齢化が進んでいることがわかります。
もちろん、最近は、寿命も延び、70歳台~80歳台であっても、健康で素晴らしい経営者も数多くいますので、一概には言えませんが、高齢化により、意欲・体力・知力とも、多少なりとも衰えていくことは避けられない現実です。
日本の企業が、後継者が後を継がず、倒産よりも廃業が多くなっています。
1.子供が継がない 例)都会に出て大手企業に勤めて帰ってこない
2.子供に継がせたくない 例)こんな苦労をさせたくない
3.子供以外にも社内に経営者の成り手が育っていない 例)計画的に育ててこなかった
4.社内に経営者の成り手がいても、なりたがらない 例)株や借金の保証の問題などのハードルがある
5.経営者が、高齢になっても経営者で居続ける 例)まだまだ、任せられない。
上記5つは、主に後継者が確保できない主な要因です。銀行その他の問題もありますが、究極は、
1.子供が継ぎたいような魅力的な企業にしてこなかった
2.経営者が次の経営者を育ててこなかった
3.経営者が株の譲渡も含めて、対処してこなかった
4.経営者の自覚がない。または、引導を渡す人を置いてこなかった
といった経営者に起因する問題であることは間違いありません。
こうした日本の現状の中では、冒頭でご紹介したデービットアトキンス氏の主張のように、
「優秀な社員を低賃金で雇用しながら、企業の生産性を上がられない経営者の改革が急務である」
といった指摘がわかります。
では、どうすれば、いいのか?
坂本光司人を大切にする経営学会会長は、経営者バトンタッチのシグナルとして次のように提案しています。
1.起業家精神が萎えたとき
2.経営者の基本使命・役割が果たせなくなったとき (方向の明示、決断、社員のモチベーションアップ他)
3.二年連続赤字を出したとき
4.後継者が育ったとき
現在、日本の人事管理制度の在り方に疑問を持ち、
1.評価があいまいな職能資格制度や役割グレード制度
2.社内のギスギス感がでる極端な成果主義の制度
に変わる、企業の成長と社員の成長を合致させる「年輪経営成長支援型人事管理制度」の検討を3年間行い、ようやく自分自身でも納得できるものになるところまできましたが、検討の過程で気づいたことがあります。
多くの中小企業においては、役員評価やまして、経営者評価がないことです。
日本でいちばん大切にしたい会社がわかる100の指標を坂本学会長と当時の坂本ゼミの仲間と検討して、出版しました。ある意味、経営者の通信簿であるといえるでしょう。
さらに、人事管理制度の中にも、経営者評価もあっていいような気がします。あるいは、社員に投票してもらうのも方法としてあるかもしれません。
坂本学会長が言われるように、「社長は、社長という役割をしている社員」であるとすれば、経営者の評価を行い、もし、ふさわしくないとなれば、潔く退くのが尊敬される経営者であると思います。
人を大切にする経営学講義(PHP)には、経営者が何度も繰り返し読むべき本質が書かれています。
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