働き方改革と就業規則⑫
働き方改革と就業規則⑫
▼就業規則の位置付け
就業規則は、法令及び労働協約と、個別の労働契約との間に位置します。
つまり次のようになります。
法令・労働協約>就業規則>労働契約
よく誤解されていることは、労働協約と労使協定の違いです。
労働協約というのは、労働組合と会社との合意によるものをいい、
その適用の範囲は締結した労働組合の組合員にのみ及ぶだけですが、
上述のように法令に次ぐ規則としての位置付けがなされています。
労使協定とは、36協定のような場合が典型例で、事業場の過半数を
組織する組合または組合がない場合は事業場の過半数の代表者と
合意をし、その事業場の労働者全員に効力が及びますが、
誤解を恐れずに言えば、労使協定を結ぶことは単に会社が
労基法違反にならならいという意味しかありません。
元に戻って、労働協約について見ると法令に準じる力をもっているので、
就業規則の内容が法令や労働協約より劣っている場合には、
法令であれば全社員について、労働協約であれば、その締結した
組合員については、就業規則よりも法令・労働協約が優先します。
▼誤解のある就業規則の効力
よく誤解があるのは、個別の労働契約と就業規則の力の違いです。
時々、就業規則よりも個別の労働契約の方が優先すると
思われている方がいらっしゃいます。
しかし、労働契約法という法律で、就業規則よりも劣る基準で
個別の労働契約を締結しても、その部分は無効となり、
就業規則に従わなければならないようになっています。
たとえば、就業規則には雇用の区別なく休憩時間は60分
と定めているのに、あるアルバイト店員に
「あなたはアルバイトだから休憩時間は50分ね。」
と個別の労働条件に記載して合意したとしても、
この合意は無効となり、就業規則の規定が適用され、
休憩時間は60分となります。
もっとも個別の労働条件が無効となるのは、就業規則の基準に
達しない労働条件を付けた場合ですので、就業規則の基準を
超える場合、法律上は、有効となります。
ただ個別契約で条件をよくするような取扱いは、
基準を不明確として社員間の不公平感を高めるなどの混乱を招く
原因ともなりますので、個別の条件は、できる限り就業規則に
沿うように合意した方がよいと思われます。
(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)
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