人を大切にする経営学会の意義

先日、新型コロナウイルス禍の最中ではありましたが、WEB等を利用し無事に人を大切にする経営学会の大会が行われました。大変有意義な大会だったと思います。

 ところで、話は変わりますが、日本のMBAの人気低迷は従前から言われてきているところではありましたが、最近は、アメリカのMBA、ハーバードやスタンフォードも応募が減少傾向にあると言われています。

この原因について、山口周氏は「ニュータイプの時代」において、これまでのMBAは、経営のノウハウを教えていた、つまり正解の出し方を教えていたが、これからの時代は、それでは経営が行き詰まる、そのことを分かっている若い人々は、もはやMBAに行かない、という趣旨のことを述べています。

 確かに、20世紀は社会問題が山積みで、企業は、それを解決するという社会的価値を創出することにより報酬を得てきました。解決力が重要でした。しかし、21世紀になり、目に見えた問題は少なくなってきてしまいました。もちろん、人間が関わる社会的問題は未だに無数にありますが、それが発見しづらい時代となってきてしまいました。問題が明らかでない場合、いくらイノベーションをしようとしても解決すべき問題がはっきりしていないために何も産まれません。

 山口氏は、これからの時代は、問題を発見する能力が必要であるといいます。私も同感です。SDGsが重視されるのは、まさにこの社会において未だ顕在化していない問題を発見し、それを解決することが企業に求められていることを示していると思います。

 問題を発見するためには、「人間の本来あるべき姿」と「現実」とのギャップを明確にしなければなりません。そのギャップが問題だからです。

そして、企業の中に、そして人それぞれの中に「人間の本来あるべき姿」がしっかり確立していないと、問題を発見するための基準を持てません。

 坂本先生が中心となって組織された人を大切にする経営学会は、まさに「人間の本来あるべき姿」とは何かを問い続ける学会です。つまり、問題発見の前提となる基準を確立することを目的として結集している学会とも言えます。

 ハウツー(How To)の時代から(株)日本レーザーの近藤会長がおっしゃるハウビー(How Be)の時代に経営学も変わっていかなければなりません。

もはやハウツー重視の経営学では、これからの時代を乗り切ることが出来ない、そのことを若い人たちは分かっているのだと思います。

是非、多くの若い経営者、経営を志す方々に人を大切にする経営学会に参加してもらいたいと思います。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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