東邦銀行さんの特例子会社「(株)とうほうスマイル」さん
東邦銀行さんの特例子会社「(株)とうほうスマイル」さん 福島県の東邦銀行さんといえば、何を思い浮かべますか? 私の答えは、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」です(笑)。 2018年、第8回の「実行委員会特別賞」を受賞されました(当時の頭取 北村清士)。 評価されたのは、 ◆東日本大震災のとき、証明書やカードの無いお客さまにも預金を払い続けた経営姿勢 ◆残業時間の大幅減少 ◆介護や育児との両立支援の充実、でした。 今日は、東邦銀行さんの特例子会社、「(株)とうほうスマイル」(代表取締役 佐藤卓夫)さんを紹介します。 発端は、現在は会長の北村さんのご幼少時にさかのぼります。 福島県の塩川町ご出身の北村さんがものごころついた頃、お母様は、ボランティア活動に注力されていたそうです。 母の献身的な姿を見ていて、「いつか私も人を助けたり人の役に立つことをしてみたいなぁ~」と思ったそうです。 そのときの想いは種となり、長年、北村さんの心の中に入り、根っこを伸ばしていったのかもしれません。 頭取となった北村さんは、ある日、1冊の本と出合います。 そこには、障がい者を雇用して彼らの働く幸せを守るために奮闘する会社が書いてありました。 北村さんの心にあった思考の種(いつか私も人を助けたり人の役に立つことをしてみたいなぁ~)が芽を出した瞬間だったかもしれません。 その本を読んで感動した北村さんは、本を150冊程購入して、部長と支店長の全員に配り、「この本に書いてある会社のように地域や社会に役立つ銀行になるように」と言いました。 その本こそ、「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司著)でした。 北村さんが感動した会社は、日本理化学工業株式会社さんでした。 知的障がい者の雇用で有名な神奈川県のチョークメーカーさんです。 北村さんは親交のあった千葉銀行さんが特例子会社をつくったと聞き、視察に行きました。 北村さんの心の中で、特例子会社を東邦銀行でも作りたい、との思考の芽がどんどん大きくなっていったのかもしれません。 くしくも2011年3月11日の昼頃、震災の起きる数時間前、猪苗代支店長(当時 支店長 大髙敏雄)に取締役人事部長(当時 長谷川敏朗)から「銀行創立70周年記念事業のCSRの一環で特例子会社をつくるように」との内示がありました。 頭取からの内示を受けた大髙さんは、それまであまり障がい者にご縁が無く、立上げ期間は、無心だったと仰いました。お手本は千葉銀行さんの特例子会社です。 「(株)とうほうスマイル」は、2012年3月1日設立、2012年4月1日業務開始、2012年4月23日特例認定です。 8年後「(株)とうほうスマイル」は、他県の銀行の視察者が来るお手本レベルにまで成長しました。 2020年には、「ふくしま産業賞」を受賞するまでになりました。 横浜銀行さんと静岡銀行さんが「(株)とうほうスマイル」を視察して特例子会社をつくりました。 千葉銀行さんからの恩送りができました。 先日「(株)とうほうスマイル」で就労アドバイザーの元支援学校校長の原美子さんのご紹介で、「(株)とうほうスマイル」の大髙敏雄常務にオンライン取材をさせていただきました。 「(株)とうほうスマイル」さんの特長は、2点だと私は感じました。 ①知的障がい者、精神障がい者、聴覚障がい者、身体障がい者らが、一緒に働いていること。 ②親亡き後に自立できるように、経済的自立の他に社会的自立も視野に入れて、強い人間になることも目的に教育に取り組んでいるところ。 原さんは自分が支援学校から「(株)とうほうスマイル」に送りだした卒業生たちが、数年後に再会したときには、銀行下請け業務を見事に遂行して成長しており、「(株)とうほうスマイル」が障がい者の可能性を具現化していることに感動されたそうです。 障がい者の方々はお仕事を休みたくないし、休まないそうです。 「一人ひとりが大事にされていると安心して、ここで頑張りたい!と思ってくれていることが嬉しい」と原さんは仰っていました。 「運営の工夫」として大髙さんや原さんらがされていることは以下です。 ①大髙さんは立ち上げ期に、障がい者のことを理解しようと、県内の支援学校を巡って、ヒアリングや調査を重ねた。 ②個性にマッチした業務割り当てにより、結果、健常者に引けを取らない業務をこなし、自立できるお給料をいただいている。 ③銀行の業務から、障がい者にできる業務を切り出して銀行と交渉して業務を障がい者に割り当てた。ただし、できないことはさせない。 ④業務と障がい者の個性とのマッチングを心がけた。 ⑤手順表を活用した。 ⑥業務を遂行できる能力があっても、不明点を聞けないばかりに、業務が続けられない障がい者もいたので、不明点、質問を担当スタッフに聞きやすい雰囲気づくりをした。 ⑦スタッフも銀行業務に精通した支店長経験者を含めて、障がい者からの質問にスパッと答え、分かりやすい対応で障がい者らを安心させた。 ⑧聴覚障がい者が、知的障がい者、精神障がい者、身体障がい者に、週1回、手話講習を行っている。 ⑨ボッチャ大会などのレクリェーションの機会を設けて障がい者と銀行本体との交流を図っている。 ⑩障がい者、家族と頭取も含めて3者面談を行う。 「取り組む銀行下請け業務」は、為替入力業務、キャッシュカードづくり、手形小切手帳発行、印刷業務、点字の残高通知サービスなどです。 例えば、為替業務は、健常者が1件に45秒~1分かかるところ、自閉症の方は20秒で素早く処理されるそうです。 ちなみに、原美子さんは、クラロンの故 田中善六社長と支援学校勤務時に生徒の就労やラジオ番組にご出演いただくなど交流があったそうです。 「田中善六さんは人徳とリーダーシップがあり明るい方だった」と思い出を話してくれました。 以上、障がい者雇用を考える経営者様のご参考になれば、嬉しい限りです。 長文をお読みいただきありがとうございました。 コロナが収束して、「(株)とうほうスマイル」さんを坂本先生に同行して視察に行けたらいいなあと、願う本田です(笑)。 (人を大切にする経営学会会員 本田佳世子)
本田様
早速掲載していただき、ありがとございます。社員、スタッフの励みになります。北村会長にも報告いたします。
弊行内での認知度が上がり、一番の誇るべき部署になるよう我々も努力してまいります。また、多くの方に関心を持っていただき、障がいのある方々が、志を持って働く場所が1か所でも増えることを願っております。今後とも、ご指導、ご鞭撻よろしくお願いいたします。コロナ収束の際は、是非おいでいただけますよう心待ちにしております。