人形工房「ふらここ」 社風を守る独自採用

ふらここは、東京都東日本橋で雛人形などの伝統人形をネット販売しています。原社長が社風を守るためにこだわっているのが人材採用です。

一般的な会社ならエントリーシートや履歴書から始まって採用面接があります。ふらここにはこれがありません。ふらここの人材採用は1次選考と2次選考を合格して最後に社長が面接時に履歴書に目を通して内定となります。ただ、内定者は年に1人ほどの超難関の選考基準があります。

まず1次選考では入社希望者だけ6人のグループディスカッションをしていただきます。テーマはビジネスで生じる問題の解決法について1時間のフリートークです。グループの外から審査する面接官は全社員が関わります。通常業務から時間を割いて交代で担当し、一緒に働きたいと思った仲間を選抜します。入社希望者は採用試験ですから自己アピールを入れてきます。ところが、面接官は自己アピールの内容に関心をもっていないのです。注目しているのは、1時間という長い時間でも集中力をもって人の話を聞き自分の考えを言えるかどうか。就職活動として1分ほどの自己アピールしか練習していない人は耐えられないでしょう。この1時間の中に日常の生活や性格があぶりだされます。この1次選考の合格者は30~50人に1人です。6か月たっても合格者が出ないこともあります。合格できれば2次選考に進みます。

2次選考は筆記試験です。一般的にアセスメント試験と呼ばれるものです。30問のビジネス社会におけるトラブル案件にどう対応するかを3時間かけて書き上げます。各問題がビジネス上で生じる具体的なトラブル事例なので、小手先の対処法ではなく自分が当事者としてどう行動するかを詳細に記入する必要があります。詳細に記入できても25問以上を答えられないと合格に達しません。3時間という時間をフルに使って全問に全力で対応できる人間力を試されます。

1年間の採用活動で入社される人は1人程です。決して採用の門戸を閉じているのではありません。社長も社員も10人程を採用にしたいと願っているのです。喉から手が出るほど人材が欲しいのに採用基準を緩めないのは、理念に満ちた職場の空気を変えないためです。新しい仲間にたいせつにすべきことを知ってもらうために、内定理由を社長が丁寧に伝えます。入社を希望して会社に足を踏み入れてから内定までの長い期間で、社員が何を見て仲間にしたいと判断したのかを事細かく説明してくれます。そんなところまで見ていてくれたのかと内定者は感動し、涙します。まだ採用されていないのに、社員の誰もが内定者のことをよく知っているのです。原さんはフィードバックの中で一人一人に「あなたはウソをつけない誠実な人ですね」また別の人に「あなたは周囲に流されない心の強い人ですね」と話しかけ、「その強みを活かすべく仲間に入ってください」とお願いします。

原さんは言います。「お客さまから笑顔をもらうためには社員が笑顔である必要があります。社員が笑顔でいられるように職場の空気をつくるのが社長の仕事です。社員が仕事の中で楽しく生きがいをもって働く環境をつくり、家族のような人間関係をつくることで社員を守っています」その言葉の裏には、採用の難しさを経験したことが容易に想像できます。採用してからの社員教育では理念を共有することは難しい。共通した理念をもっている人だけを採用すればいい。弱点は時間がかかり過ぎることです。経営においてスピードは必須です。それでも原さんは急ぎません。そこまで時間をかけて人を集め、集まった30人の仲間の共通性は何かと原さんに尋ねてみました。「真面目な人です。投げ出さず他責にせず、課題に真摯に向き合ってお客さまの笑顔のために自ら行動できる人です」(学会会員:根本幸治)

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