心理的安全性を高める

心理的安全性について、有名なエドモンソン教授による医療過誤に関する調査の報告があります。

教授の報告によれば、調査当初、開かれた雰囲気がある心理的安全性の高いチームは、そうでないチームよりもミスの報告数が多く出ており、意外だったそうです。教授は心理的安全性が高いチームは、緊張感がなく、気が緩みがちだからかもしれないと考えたそうです。

しかし現場に調査員を派遣し、より詳細に確認すると、心理的安全性の高いチームでのミスの報告は全て自己報告であり、心理的安全性の高いチームの方がそうでないチームよりも実際の医療過誤は少なかったという結果になりました。

 心理的安全性の高いチームはヒヤリハットなどの些細なミスも報告をし、共有し合って、そこから学びを得て、再発防止に役立っていたことが分かったそうです。

一方で、心理的安全性の低いチームは、人々は咎められるのを避けるために自分のミスを隠し、原因を特定して将来のミスを防ぐことができず、同じ過ちを繰り返していました。

心理的安全性の高い組織は、大きな失敗が少なく、小さな失敗は恐れずにそこから学ぶ仕組みが醸成されます。とするならば、そのような組織は、トライアンドエラーを続けることができる組織であり、イノベーションも起こしやすくなるということだと思います。つまり大きな失敗も少なく、一方でイノベーションを起こし続けることができる組織だということになります。このような組織は、今求められている組織像なので、心理的安全性の著書が多く出されているのだと思います。

それでは心理的安全性はどうしたらできるのか。それは規律を緩めることでもなく、リラックスした環境を作ることでもなく、愛想良く上司が部下のいうことに何でも同調することでもなく、部下を無理に褒めることでもありません。緊張感がなく、緩い組織にするという意味ではないのです。

心理的安全性は、社員が上下に関係なく、お互いを尊敬し、信頼し、オープンでいられる雰囲気を創ることだと言われています。そしてそれは日々の職場での取り組みによって創られ、成熟していくものです。

その意味では、経営者、役員、社員の全てが「お互いを尊敬し、信頼し合う」よう努力をすることは、社内の行動指針の重要な一項目となるはずです。

そして、これを徹底するためには、就業規則の服務規定の中にも「社員は上下の隔てなく、お互いに尊敬し、信頼し合う」ということを定め、日頃の事業活動において、そのことにお互いに意識付けをしていくことが必要だと思います。 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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