「お客様は神様」≠お客様を大切にする

人を大切にする五方よしの経営は、社員とその家族、社外社員とその家族、現在顧客と未来顧客、・・と3番目にお客様を大切にします。この順番が大切だということは、人を大切にする経営学会では常識となっています。

 ところで、2023年3月27日号の日経ビジネスでは、「悪意VS企業 カスハラ、炎上・・・揺らぐ性善説」と題して、「スシロー『ペロペロ事件』」などを題材として、「『三方よし』はもう限界 もろくも崩れる性善説 カスハラにあらがう術」と題してお客様至上主義の崩壊を指摘しています。

 しかし、そもそも人を大切にすることと人を甘やかすことは次元を異にするものです。日本レーザーの近藤副会長の著書「社員を『大切にする』から黒字になる。『甘い』から赤字になる。」にも通ずるところであり、お客様を大切にするから黒字になる。甘いから赤字になる、のだと思います。

 さくら住宅の二宮副会長は、理不尽な値下げ交渉をしてくるお客さんは断る!という方針だったのは有名な話です。

 理不尽なお客様から、社員や社外社員を守ることは経営者の勤めです。それを目先の利益を追いかけるために、お客様に「甘く」してしまったら、結局、社員らを不幸にすることになります。

 では「大切にする」という姿勢でお客様に相対するとき、どのような視点で判断すればいいでしょうか。参考になるメルクマールは、パワハラの基準です。

 お客様に厳しく対応すべき場面とは以下のような場面です。

(1)社員が、身体的な攻撃を受けたとき(暴行、傷害)

(2)社員が、精神的な攻撃を受けたとき(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言)

(3)社員に対して過大な要求をしてきたとき

(4)社員の個人的な内容に立入り個を侵害したとき

(5)他のお客様に迷惑をかける行為をしたとき

 これらの行為が生じた場合には、お客様だからといって、我慢をせず、きちんと警察へ通報して、適切な対応をしてもらうべきです。そうすることで社員を守れますし、他のお客様も守れます。

 大切にしようとすることは、時には、厳しく対応することも必要なのだと思います。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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