コミュニケーションの難しさ
コンプライアンスが確立している会社では、経営側と社員側とで良好なコミュニケーションが形成されています。何かあった時もなかった時も、直ぐに話し合える関係性を作っていることが必要です。
コンプライアンスに問題のある会社は、必ずこのコミュニケーションにも問題が生じています。コミュニケーションに問題がある場合とは次のような場合です。
- そもそも、双方向でのコミュニケーションそのものが存在していないケース
- 一応のコミュニケーションがあるものの、大切なことについて、お互いに本心を言わないケース
- それぞれはコミュニケーションをとっているつもりでも、行き違いがあるケース
そもそもコミュニケーションが存在しないケースや本音でコミュニケーションができないケースでは、経営者自身が根本的に心を入れ替えて、自ら歩み寄る必要があります。
難しいのは、コミュニケーションがとれているはずなのに、行き違いが生じてしまうケースです。この場合、お互いが同じ「ことば」を使っているのに、実はその使っている「ことば」自体の定義、その内容がそれぞれで違っていたということがよくあります。日本語はとても難しい言語だと言われています。たとえば、英語では、「No Smoking」と言えばすむことを、日本語では、「ここでは煙草はご遠慮下さい。」という曖昧な言い方になったりします。「煙草を吸うな」ではきつい言い方になってしまうからでしょう。しかし、「遠慮」では、ちょっと自制をすればいいのか、絶対に吸ってはいけないのか、明確ではありません。人の取り方によりニュアンスが異なってきます。このように同じ言葉を使っていても、その意味するところに幅があるのが日本語だと言われています。そのため、同じ「ことば」を使っていても、違う意味に使っている、ニュアンスが異なるということが生じてしまいます。
このような場合には、どのような意味でそのことばを使っているのか、そこが共通の認識なのかを意識することが大切になります。
たとえば、朝礼で会社の理念を唱和し、会社の理念にかかわる体験を社員に発表してもらうなどということも、理念で表現されている「ことば」の意味が社員間で共通になるよう確認する目的もあるのではないかと思うのです。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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