日本のジェンダー・ギャップ

4月から始まったNHKの朝ドラ「虎に翼」は、弁護士業界で日々話題に上がるドラマとなっています。伊藤沙莉さんが演じているヒロイン猪爪寅子のモデアルは、三淵嘉子さんと言われています。三淵嘉子さんは、初の女性判事補となった石渡満子さんに次いで1949年6月28日東京地裁の判事補になります。その後、家庭裁判所等の判事を重ねて1979年に退官し、翌年から1980年に弁護士として活躍され、1984年に亡くなられました。

 このドラマはオリジナルの脚本とのことですが、当時の日本の状況がよく描かれているように思います。日本の風土に根ざしてしまっている女性差別の意識、男性は意図的ではないとしても、世の中の「常識」として無自覚に差別的な言動を行ってきたことがよく分かります。

 世界経済フォーラムが算出した2023年のジェンダー・ギャップ指数は、日本は146か国中125位となっています。指数は、教育、健康、経済参画、政治参画の4つのテーマで評価されますが、教育と健康はほぼ完全平等であり、世界的にもトップクラスですので、経済参画、政治参画の指数がいかに低いかが分かります。ドラマで描かれている戦後直後の日本のジャンダー・ギャップは、70年以上経った今もあまり変っていないと認められざるを得ません。未だにセクシャルハラスメントが問題となること自体、残念ながら、そのことを証明してしまっています。

 今年4月、日本弁護士連合会では、女性で初めての弁護士会会長として淵上玲子弁護士が就任しました。世の中を見回すと、日本労働組合総連合会の第8代会長芳野友子さん、CA出身の日本航空社長の鳥取三津子さん、井村屋グループの中島伸子さん、など少しずつですが女性社長も登場しています。

しかし一方で2024年5月1日の日経新聞デジタル版「女性役員30%以上1割どまり プライム1の12月期企業」によれば、東証プライム上場12月期決算企業190社中、取締役会で女性役員が30%以上を占める会社は19社(全体の9%)にすぎないことが報告されました。

 女性推進法の第2条(基本原則)第2項では、次のように定められています。

「女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活を営む女性が結婚、妊娠、出産、育児、介護その他の家庭生活に関する事由によりやむを得ず退職することが多いことその他の家庭生活に関する事由が職業生活に与える影響を踏まえ、家族を構成する男女が、男女の別を問わず、相互の協力と社会の支援の下に、育児、介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境の整備等により、男女の職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならない。」

 男女がともにこの課題に取り組むことが必要不可欠です。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です