ビジネスの最先端?!
経営コンサルタントでもあり哲学者でもある山口周さんが新たに「クリティカル・ビジネス・パラダイム」(2024年4月29日発行、株式会社プレジデント社)という書籍を出版しました。
これからのビジネスの在り方について提言する内容となっています。その中で、レッドオーシャンにおけるゼロサム・ゲームは筋の悪い戦い方だと批判した上で、これからのビジネスは「プライスサム・ゲーム」でなければならないといっています。
山口周さんの文書はやたらとカタカナ文字が出てくるところがついていけないところではありますが、プライスサム・ゲームとは、「市場の大きさは可変であり、市場の拡大によって参加者のすべてが売上や利益を増やせる状況」、ビジネスによる啓発や教育を通じて市場やステークホルダーの意識を高めることで、新たな価値やニーズを創出している、と説明しています。そして、その例として、2014年に保有するテスラの電気自動車に関連する特許をオープンソースとして解放するとしたことを挙げています。
しかしこのような考え方による経営は、何もこれからの「新しい」企業の在り方を示しているとは言えません。ある意味で経営の基本的な視点を示しているのだと思います。そしてこのような視点は既に日本では「新しい」ものではありません。
坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社5」に掲載されている株式会社ふくやの創業者である川原俊夫さん、千鶴子さんご夫婦は、ご承知のように、苦心して完成させた明太子の製法について特許を取ることもなく、周りの人々に教えていきました。その結果、福岡中州中心の商圏だった明太子は、日本全国へ広がっていきました。
同じ「日本でいちばん大切にしたい会社5」に掲載されている株式会社さくら住宅の相談役である二宮生憲さんは、リフォーム業界の底上げをめざすとして、全国リフォーム合同会議を立ち上げ、勉強熱心な全国各地のリフォーム企業に自社のノウハウを提供し、経営支援を行っています。
これらの取組みは、まさに山口周氏が提案している「プライスサム・ゲーム」そのものです。
人を大切にする経営学会副会長の西浦道明さん(アタックスグループ代表パートナー)がよくおっしゃっている「池クジラ戦略」も「そもそも世の中になかった価値を提供する」としており、この考え方もプライスサム・ゲームと同様です。
このように見てくると人を大切にする経営の実践は、人を大切にするという意味だけでなく、経営面でも最先端にいることが分かります。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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