全てのやり方を変える必要はない

島根県立大社高等学校は、2024年8月17日、早稲田実業高等学校をやぶり93年ぶりに夏の大会8強入りしました(残念ながらその後神村学園高等部に負けてしまいました)。

 この大社高校野球部は2年前まで管理野球をしていたそうです。ところがなかなかチームが勝てないので、監督が方針を変えて、学生と話し合いながら練習メニューや方法を決める自主性を尊重した運営に変えたそうです。早稲田事業との試合、同点で迎えた7回、センターがエラーをしてしまい、その間に打者がホームまで帰り、1点を与えてしまいました。しかし痛恨のエラーにもかかわらず、大社の選手達はお互いに声を掛け合い、お互いを励ましあったそうです。

なぜエラーをして失点しても踏ん張り続けるチームができたのか?その点で面白いエピソードとなっているのは、「昭和の日」「昭和デー」です。月に1、2回、大雨の日に、30分ほどグラウンドでノックを行い、泥の中で選手が這いずり回り、ボールをとり続けるということをしていたそうです。いわば昭和の「根性練」です。大雨の日のノックに、特に科学的、合理的な意味など見いだせないと思います。  しかし、選手は「何が何でもボールに追いつくというメンタルを、甲子園で全員が発揮できている」と昭和デーの意義を語っています。

 「年功序列」、「終身雇用」などの制度から会社での飲み会などのソフトな面に至るまで、昭和時代の価値観は、もはやVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の現代社会には通用しないという言説をよく聞きます。             

 しかし、これらの制度や仕組みにもいい面があったことを忘れてはいけないと思います。もちろん過去のまま現代社会に当てはめようとすれば、難しい面も出てくるかも知れません。全部を残すことができなくても、大社高校が取り入れた「昭和デー」のように、これらの制度や仕組みの良いところを残していく工夫はできるはずです。

今でも日本の企業の中には、年功序列、終身雇用を守りながら、成長し続けている会社もあるのです。

 (学会 法務部会 常任理事  弁護士山田勝彦)

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