人を大切にする経営とは~残業ゼロの是非について考える
「ゆるブラック」といった言葉が、2019年頃から出始め、
リクルートワークス研究所の調査結果から、
他の研究機関も調査をはじめて興味深い結果が出ている。
リクルートワークスの調査結果は、
現在の会社との関係で、「すぐにでも退職したい」が16.0%、
「2・3年は働き続けたい」に至っては41.2%に達しており、
合わせて57.2%が、ごく短い期間の在職イメージしか持っていない。
そして、それは、キャリアに関する不安である。
2013年の安部元総理の政権下で本格化した働き方改革に疑問を呈している。
最近、私自身が自社で開催している講座を受講する経営者らから、
「人を大切にする経営とは何かがわからなくなってきた」という声が多くなった。
「企業経営の目的は関わる人を幸せにする活動である」
という坂本学会長のメッセージは、その通りである。
しかし、その具体的な取り組みについては、
2013年の働き方改革スタート時点から私自身も疑問を持っていた。
それは、2つの理由からである。
一つ目は、「幸せは十人十色であり、決めつけられるものではない」からである。
ドーランという幸福学の学者は、
働き涯といった幸せと日々の幸せがあり、
その振れ幅の大きさが人生の充実度合を左右する。
ただし、働き涯を重視する人と日々の幸せを重視する人の
ウエイトは人それぞれである。
二つ目は、時間軸である。
日々の幸せが若い時に充実したといっても、
将来、活躍できるだけの力がついていなかったら、
組織や他者に役立つ仕事ができるだろうか?と感じたからだ。
つまり、画一的な政策は、
- 幸せが人によって異なる
- 将来の幸せを担保できるか
の二つを担保できないのではないか・・・
私自身も62歳になったが、まだ、現役でやれているのは、
若い時に泥のように働いたからだと思うし後悔もない。
しかし、このことを人に押し付けるのは、お門違いだと思う。
まさに、人生いろいろだと思うからである。
今年は、パリオリンピック、パラリンピックが開催されたが、
メダルを取るような選手は、間違いなく時間に関係なく練習しているに違いない。
一度の人生で、人の思いを軽視した政策は、
ほどほどにしないと国力にも影響する。
若い時に読んだ柳田国男の書籍の中で、
「資源も何もない国で人が付加価値を上げないでどうするんだ」
といった主張を記憶している。
国力が弱くなれば、国民の生活にも当然、影響にある。
実際、アメリカでは、祝日と有給休暇を合わせた休暇日数の合計は24日。
それに対して日本では、祝日と有給休暇を合わせた休暇日数の合計は27日である。
休暇の日数だけで単純に比較できないが、
表面的な残業削減ではなく問題は時間当たりの付加価値である。
複数の経営者が発した人を大切にする経営とは何かに関する疑問と
「ゆるブラック」といった言葉から、
盲目的に残業=悪 かどうかを問い直してみることは重要だと思う。
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