タイム・パフォーマンスと仕事

「今日、誰のために生きる?アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語」(ひすいこうたろう、SHOGEN著)という本の帯には「効率よく生きたいなら、生まれてすぐ死ねばいい」という衝撃的なフレーズが記載されています。

 効率よく生きた先に何があるのか?きわめて哲学的な問いであり、生きる意味を考えさせられるフレーズです。

 タイム・パフォーマンス(タイパ)が悪いとは、無駄な時間を使っているという意味です。前述の効率よく生きたいなら、生まれてすぐ死ねばいい、とは、人生を無駄に使っているのではないかという厳しい問題提起です。

この「とは」とは「効率よく生きる」を実践しようとする考え方に繋がります。 これまで日本では、「効率よく」ということは美徳とされてきました。特に仕事においては「効率よく行う」ことは重要です。

 これを仕事に当てはめるとどうでしょうか。2022年にタイムクラウド社が仕事に就いている人1,000人強を対象に行ったタイムパフォーマンスに対する意識調査では、ワースト順に、①会議、②紙の資料、③通勤時間、④報告書、⑤朝礼、⑥申請書、⑦飲み会、だったそうです。

 しかしこれは意識、又は時間の過ごし方の目的設定の問題だと思います。会議や朝礼でも目的意識をもって参加すれば、意味のある時間になります。通勤時間も、読書をしたり、新聞を読んだり、この時間を有効に使うことが出来ます。そのような意識で、目的をもって時間を過ごせば、無駄な時間とはなりません。

 何のための朝礼なのか、何のための会議なのか、何のための飲み会なのか、その目的が重要であり、その目的を社員が共有していれば、朝礼、会議、飲み会も有意義な時間になるはずです。

人を大切にする会社では、これらの目的が共有されているからこそ、社員は「タイパが悪い」などとは言わないのです。

 タイム・パフォーマンスについて、もう一つ大事なことは、無駄だと思われることにも意味があると言うことです。効率よく実施しようとしても、なかなか上手くいかず、失敗ばかり。これはタイム・パフォーマンスとしては無駄で、排除されるべきことになります。しかし、人は失敗からしか学べません。失敗を通じてのみ人は成長ができます。これは仕事でも同じことです。効率ばかりを重視して、失敗を恐れ、大切な経験を得る機会を失っては、何の意味もありません。むしろ失敗を体験し、そこから学ぶことこそ意味があるのです。

 単純な作業・業務を効率化することは大切です。しかし朝礼、会議、飲み会も目的意識を持てば、大切な時間になりますし、失敗もまた学ぶことを通じて大切な時間になります。何もかもタイム・パフォーマンスでくくってはいけないと思います。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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