カスハラ対応の準備を
カスタマー・ハラスメント(通称「カスハラ」)については、令和2年1月に厚労省告示第5号として「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」において、顧客等からの暴力、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組みを行うことが望ましいとされました。
そして昨年末頃から各都道府県において、カスタマー・ハラスメント防止条例が制定され、本年(2025)年4月1日から施行されています。
たとえば東京都条例をみると、カスハラとは「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう。」(第2条5号)とされ、「著しい迷惑行為」とは、「暴行・脅迫その他の違法な行為又は政党な理由がない過度の要求、暴言その他の不当な行為をいう。」とされています。
その上で、まず顧客の責務として、第7条1項では、顧客等は、カスハラに係る問題に対する関心と理解を深めるとともに、就業者に対する言動に必要な注意を払うこと、及び都が実施するカスハラ防止施策に協力することを努力義務としました。
また事業者の責務として、カスハラの防止に主体的かつ積極的に取り組むと共に、都が実施するカスハラ防止施策に協力する努力及び、その事業に関して就業者がカスハラを受けた場合には、すみやかに就労者の安全を確保するとともに、当該行為を行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずる義務が規定されました。
これらはいずれも努力義務ですから、経営者が措置等を講じなくても行政処分等を受けることはありません。しかし、もし社員がカスハラで心身に故障を起こした場合、何らの措置も講じていないと安全配慮義務違反として損害賠償の責任が生じる可能性がありますので、注意が必要です。
現在、厚労省からカスハラ対策マニュアルが出ています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
これを基本として、御社独自の特徴的なカスハラ事案を想定して、独自に対応策を具体化することがお勧めです。
もとより、多くの顧客はカスハラをしません。そのために適切に対応できるよう社員にも教育が必要となります。
シンプルベースの対応としては、対応は穏やかに、丁寧に、顧客の理不尽な要求は毅然とする姿勢が必要です。つまり、クレーム、要望又は要求は丁寧に聞くけれども、それに応えるかどうかについては毅然とし、場合によっては断る姿勢を示すことになります。
言うや安し、行うは難しですが、社員を守るために社内で統一した教育が必要不可欠です。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)
コメントを残す