適材適所と感謝

職業柄、様々な話を聞く機会ありますが、その中でも特に心に残った話があります。

刑務所内では、懲役刑を執行する場として、刑務作業を行わせています。作業内容は、木工、印刷、洋裁、金属工及び革工などの業種から各人の適性に応じて指定されます。

それぞれの作業場には、受刑者の班長が任命され、その班長を中心として業務を行います。そして班ごとに達成率、完成度を競わせているそうです。

 ある作業場で、毎月、作業成績が最下位の班がありました。その班の担当刑務官は、自分の班の成績がいつまでも上がらないことから、班長を変えることにしました。その班長は、受刑前はある会社の経営者だったそうです。

 その班長に任せたところ、その月から班の成績はどんどん上がっていき、数ヶ月で最も優秀な班になったそうです。班の担当刑務官は、これまで不振だった作業がどうして短期間によくなったのか不思議に思い、その班長に理由を聞いたそうです。

 するとその班長は、「特に何もしていません。ここにいる人は良くも悪くも個性の強い人ばかりですから、どのような役割が合うかを見付けるのが簡単です。その人に最も合う役割を担ってもらいました。それから、とにかく感謝を続けました。「今日もありがとうね。貴方のおかげで作業がとてもよくはかどりました。」と私から毎日頭を下げていました。すると翌日も、一生懸命働いてくれるんですよ。」と話しをしてくれたそうです。

 その方がどのような理由で刑務所に入ることになったのかは分かりません。しかし、その経営者としての手腕は高かったのでしょう。

 適材適所、その人に合った働き場所を提供する。そして「働いてくれて、ありがとう!貴方が働いてくれるから会社が発展しています。」と毎日、頭を下げて感謝を伝える。

 この話しの中に、経営の基本があるのだと学ばせて頂きました。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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