近視眼的な働き方改革とその影響

突然に決まった解散で、メディアも街中も総選挙一色になっています。

高市早苗首相(自民党総裁)2025年10月の就任時に発した「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」というフレーズは、2025年の流行語大賞年間大賞に選ばれました。この発言は、自身の全力で働く決意を示す一方、長時間労働を推奨しかねないとして過労死遺族らから批判も起きました。2026年1月には、この言葉を再引用し、衆院解散を表明しています。

運送業界では、高市氏の「労働時間規制緩和」を示唆する姿勢に対し、稼ぎたいトラックドライバーたちが「もっと働かせて」とSNS上で共鳴し、労働基準法の厳しい「働き方改革」に対する緩和を求める声が上がりました。

2024年問題と言われましたが、トラックドライバーにも働き方改革関連法が施行されました。これにより労働時間が制限され、長距離運行や夜間輸送など「もっと稼ぎたい」ドライバーの収入が減少し、他の業界に転職し、経営側も人手不足に悩む状況になりました。また、物流コストが高まり、今回の選挙の焦点にもなっている物価上昇の理由の一つになっています。

高市首相から厚労省への主な指示内容は、労働時間規制の緩和の検討です。
「働きたい人が挑戦できる社会」を実現し、労働市場の変化や企業競争力強化に対応するためですが、過労死・過労自死が増加傾向にある中で「働き方改革の逆行」であるとして強い反対の声が挙がりました。自殺した電通高橋まつりさんのお母さんがメディアに登場して反対を訴える等、まさに、賛否が問われています。

個人的には、なぜ、こうした事態になっているかといえば、下記のような要因があると考えています。

1.人により異なる幸せや生活の面、キャリア形成を考えない画一的な政策
ワークライフバランスを重視することは決して悪いことではありません。一方、働くことに幸せを感じる人もいます。また、一時期頑張ることが将来に自己実現することになる面もあります。こうした中で、画一的に、残業=悪 と決めつけたのは、大局的な判断ではないと思います。

2.局所的な政策
システムが複雑(非線形・相互依存)だと、局所的に良い判断が全体に悪影響を及ぼすことがあります。最適解が一つではなく、局所最適点が多数存在する場合も多く、前述の運輸業界に起きた、人手不足加速、物流コスト上昇は、まさに社会全体で起きたことの想定がどの位見積もられ、対策が検討されていたかが疑問です。さらに、先進国の中で、ダントツに生産性が低い国になり、国力にも影響しています。

3.時間軸がない政策
上記、1.2.を考えた上で、DX化他で、全体最適を考えた上での未来に向けた時間軸で段階的に考えることがなければこうした事態になります。

4.ルールを守ることが最優先される
社会は、ルールがないと不安定になります。一方、ルールを守ることが目的化されてしまうことが、発生します。給湯器が壊れてお風呂に入れない高齢者、ケガが病気で緊急性を要するような仕事に支障が出ています。例えば、救命救急病院も人手不足や診療報酬その他で赤字9割になっていますが、美容クリニックでは、高収入で夜勤もないことで人気のところも多くあります。

高市首相が厚労省に指示したことは、今までの政治の意思決定のスピードを見ると、時間がかかるに違いありません。

このように様々なことが複雑に絡み合い、賛否が分かれる本当に難しい問題ですが、まずは、近視眼的、単眼的になるのではなく、全体を見て中長期的な観点で見ることの重要性を感じます。

藤井正隆

 

 

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