捨てる技術

最近、視察した優良企業で立て続けて出てきているキーワードがあります。

それは優良企業が優良企業であり続けるために必要不可欠なことかもしれません。そのことをしているから、経営において最も重要な継続の実現がなし得ているとも考えられます。

それは「捨てる」ということ。

それは、もしかするとこれまで自社を支えてきた基幹事業かもしれません。あるいは売上の何割かを占める顧客であるかもしれません。

もし現状がほぼ自分のキャパシティ一杯の状態で仕事をしているとしたら、どんなに素晴らしい新しい仕事のアイデアが浮かんでも、今やっている何かの仕事を「捨てる」ことをしない限り、新しい仕事の具現化は出来ません。

逆に言うならば、今やっている仕事の一部を「捨てる」ことで空きが出来て、そこで新しい仕事をする余裕が出来ます。面白いもので勇気をもってもはや惰性となっている仕事を「捨てる」と目的に適った新たな仕事が呼びこまれるように入ってくるようになります。

自分は3年前に「理念経営のすすめ」を提唱し実践し始めてからまさにそのことが実現しました。

マクロ経済がどういう状態になろうと、景気を超越し、自らが景気を創造している2割の「良い会社」はこの「捨てる」技術が卓越しているものと考えられます。

スーパーオオゼキでは業界では常識であるバイヤー制度を捨て、各店の独自性を出せるようにして絶大な顧客満足を得ることに成功しました。

でんかのヤマグチは「過剰な値引きを要求された」「過去にトラブルがあった」「過去1年間に5万円以上の商品購入がない」顧客を捨てました。その数は実にそれまでの既存客数の半数以上となりました。しかしセグメントし残った顧客には量販店では到底できない徹底したフォローをするという差別化を実現し価格競争をしなくても持続可能な経営を実現していきました。

坂東太郎は売上に貢献していた出前制度を社員の安全確保が出来ないとして捨てました。その後、親を連れて行きたくなるような魅力的な店舗経営に傾注していきました。

枚挙にいとまがないくらい事例を指摘することが出来ます。

「捨てる」とはすなわち変化することです。時代のニーズや社会環境の変化を先読みして、新たなサービスや商品を開発するために、今はまだ商品価値はあるけれども衰退領域に突入することが確実なものを衰退する前に意図して整理することです。

「捨てる」技術に磨きをかけるためには、常に考えること、深く考えることが求められます。

やはり目的志向をしていることに尽きます。かつては○○の目的があって、確かにこの仕事をする意味があったが、今では売上にはなるものの本来の○○の目的はほとんど喪失しているというような仕事はさっさと捨て去るべきなのです。

目的志向、すなわち理念経営のメリットはこんなところにも如実に出てくるのです。

小林秀司

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