目的と手段

昨日に続く


利益を追わなくなると企業の業績は高まる
坂本光司教授の近著である『利益を追わなくなると、なぜ、会社は儲かるのか』(ビジネス社2016年12月)の40Pには、成功法則07「会社経営の優先順位をきちんと見極める」の中で、「会社経営の目的は会社に関係するすべての人を幸せにすること」である。
「業績を高める、シェアやランクを高める、あるいはライバル企業に打ち勝つというのは、目的を達成するための手段であって目的ではない」と述べている。

さらに62Pからの成功法則12にも「幸せ軸を主軸にすれば、業績もブレることなく安定して高くなる」とも述べている。
 近年の我が国の赤字企業の増大についても『さらば価格競争』(商業界2016年10月)の中で述べている。昨年の10月に出版した商業界の『商業界』12月号の20Pからは坂本教授の巻頭提言にはこんなことが書かれている。
価格競争が「三方良し」で成立する前提には2つの背景がある。
一つは、社会全体が右肩上がりで、供給が追いつかないほど需要があり、量産・量販効果が期待できる状態であること。
もう一つは、アジア諸国に消費者が満足するような商品を開発する力がない場合だ。
それなら価格が高くても開発力・技術力のある日本企業は優位に立てる。しかし、この二つの背景はすでに終焉しているとしている。
略、そこからの脱却をしなければ、略 安売りの先にあるのは殺し合いのスパイラルである。

戦後の高度成長期からバブル崩壊までは、効果効率を重視するアメリカ型の経営が成り立ったのである。
すなわち、社長や上司の態度に反感を持っても給与が上がっていたので、我慢ができ、家庭に戻ってもより良い暮らしができるのでよかったのである。
バブル崩壊、リーマンショックと続き、給与は上がるどころか大幅カットや首さえ危ないという経営が今も続いている。
一方、アメリカは今日でも人口が増えて経済が依然として伸び続けているので、ドラッカーの考え方もまだ、通用するのだ。
しかしながら、グ-グルを始め欧米や中国、台湾、ベトナムでも人に優しい会社が現存し、日本的経営と言われた経営手法が世界的に広がりをみせている。

マズロ-の欲求6段階説
欲求5段階説で著名なマズロ-は晩年に6段階を残していた。
生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求と上がり自己実現欲求の上の自己超越欲求である。
つまり、自分を捨てて世のため人のため、利他の追求である。(廣瀬清人・菱沼典子・印東桂子著論文(2009)『マズロ-の基本的欲求の階層図への原点からの新解釈』聖路加看護大学紀要 他)

我が国では、就職ができない人々は社会的欲求を求め、定職に就いている人々は承認欲求を求めているので、最近は表彰する制度を設けている企業が増えているようだ。
自分だけ達成するのではなくチ-ム一体となって目標を達成する方が満足度が高まっているようで、チ-ムワ-クが大切になっていくと思われる。
徳島市の西精工のように従業員満足度から幸せ度を大切にする会社も出てきている。
日本理化学工業の大山康弘会長が「人間の究極の4つの幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人に必要とされること」と言っているのでヒントになる。

結論
バブル崩壊後の価値観 売上・業績至上主義から社員とその家族を大切にする経営へ変わり、同時に幸せを感じる経営へ移していくことが大切である。
法政大学大学院石山恒貴教授が主張するパラレルキャリア(石山恒貴著(2015)『時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!
―「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる 』ダイヤモンド社)に代表されるボランティア的な起業、NPO法人等の起業が進展すると予想される。
ヤフ-では社員の1割が副業を持つという(2017年1月4日朝のNHKニュ-ス)。世の為に貢献したいと考える日本人が増えている。

会計事務所も、3年程度は無償で社会起業家を支援して地域に貢献することが求められているのではないだろうか。
上場企業301社への調査では、副業・兼業禁止は73.1%で、
認めているが届け出または許可制が17.9%、認めて届け出の必要性がないが1.0%で、(日経新聞の2016年1月11日付、日経新聞、日経リサ-チ調査)企業間格差が激しい。

これからの働く主役は、女性、障がい者、高齢者であり、社会保険労務士が活躍する場でもある。
先行研究の高木論文にもあるように、人事労務の経営課題を経営者と共に対処していく社会保険労務士が求められている。
宮崎市で25年間社会保険労務士として活躍している川越雄一氏の2冊の本は、従業員と経営者が共に人に優しい会社を創っていく際に参考となる。
『パ-トさんがグッとくる会社』(2015年 労働調査会『終わった人にさせない会社』(2016年 労働調査会)は好著である。
政府の働き方改革が国民の幸せにつながるようにと願う。

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