仕入れ業者さんから学んだ事

 先日、当社が仕入れをしている商材商社のA社の社長が来社された。A社は、社長が営業をし、奥さんが事務の手伝いをしているという小さな会社です。当社はA社から商材や薬品を定期的に仕入ており、当社の仕入れ額はA社の中でも一番多いとおっしゃっておられ、お会いする毎に丁重に挨拶をされていました。日頃は、急に必要となる少額の商材が配送業者では希望納期に間に合わない時は当日に自分で持ってきてくれたり、急な注文でも融通をきかせていただいている。A社は現場担当者からも評判がよく20年以上も取引をさせていただいてきた。

 この会社の社長は月に1度くらい納品と挨拶を兼ねて来社され、その際、私が在社していれば軽く会話をする程度だった。ただ、今回の訪問は特別だった。いつもになく、前日に訪問のアポイントを取ってから来社されたのである。訪問の目的は、「ご相談したいことがある」というものだった。
 訪問の当日、約束の時間になるとA社の社長がいつもとは違って背広を着て来社され、何か普段と違う事に気が付いた。営業マン上がりの社長とはいえ、特にお世辞や営業トークが上手いわけでもなく、面会が始まってありきたりの世間話が終わると「実は」と切り出してきた。話の内容は、当社がこの会社から仕入れている薬品の価格を値上げさせていただきたいというものだった。値上げの理由は、当社に納めている薬品の原材料の高騰によるメーカーの値上げの要請によるものである事を説明された。

 A社の社長話を聞きながら、私は、材料の薬品の仕入れ値が上がった場合の当社販売価格のエンドユーザ―への転嫁の事や、法政大学時代の坂本先生の「社外社員とその家族」の話を思い出していた。
 この会社は社長と奥さん二人でやっている会社だが、値上げは当社にとってもつらい。しかし、この社長との長い付き合い、また、日ごろは、無理なお願いもほとんど全部こなしてきてくれた事を振り返っていた。
私は即答ができず、「来週お返事します」とのあいまいな返事をしてしまったが、腹は決まっていた。「彼の要望とおりにしてあげよう」と。

私の会社だって下請け仕事は沢山している。無理な価格要請にも応じてきている。
 法政大学の時に坂本先生の講義がよみがえる。「社員とその家族の命と生活を守る。それは下請け業者や仕入れ業者も同じ。もし、自分が下請け業者だったら、或いは自分の身内の会社だったら」。
 日頃から真面目に誠実に取引をしてくれていたからA社の社長の要求を呑む気になったのではないだろうか。当社の仕事は顧客に接して誠実だろうか、嘘をついていないか。
A社の社長から学ばせていただいた。 石川 勝

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