『同一労働同一賃金』とは何か(その2)

『同一労働同一賃金』とは何か(その2)
 
退職した後の再雇用時の賃金格差が問題となった横浜市の長澤運輸、
契約社員の通勤手当の格差が問題となった浜松市のハマキョウレックス、
2つの事件について6月に最高裁判決が出されます。
この判決は今後の同一労働同一賃金の考え方を左右します。
さて、今回は基礎編その2です。

【「同一」を求められるのは賃金だけではない?】
 基本給は当然ですが、昇給も対象になります。
手当も原則として対象となり、厚労省モデル案では、各種手当として、
①賞与、②役職手当、③特殊作業(or勤務)手当、
④時間外(or深夜、休日)労働の割増賃金、
⑤通勤手当、⑥出張旅費、⑦食事手当、
⑧単身赴任手当、⑨地域手当、
が対象となります。
 さらに福利厚生や教育訓練も同一が求められ、福利厚生施設の利用、
慶弔休暇、病気休職、法定外年休・休暇、教育訓練が対象とされています。
 そして、それぞれの判断について、各会社が採用している給与規準
((1)職務内容、(2)職業能力、(3)勤続年数など)
のそれぞれの規準に照らして、同一か否かを判断することになります。

【この給与は同一?】
 厚労省のガイドラインには、いくつかの例示があります。
ここでは、それを見ながら、感覚をつかんでみたいと思います。
 次の場合、同一労働同一賃金と言えるか?
【例1】
 正規社員A  定期的に職務内容や勤務地の変更がある総合職社員
 非正規社員B 特定の店舗Xでのみ働いているパート社員
 勤務内容   現在、正規社員Aは、管理職のためにキャリアコースとして、
数年間、店舗Xで、パート社員Bのアドバイスを受けながら、Bと同じ仕事をしているケース
 基本給    Aは、Bに比べて高額の基本給を得ている。
なお、管理職キャリアコースに入るためには一定の職業経験・能力が必要
 (答え)⇒セーフ
 この場合、同一労働同一賃金の問題とはなりません。
 この会社が、職業経験・能力に応じて支給するような給与制度を設けている
場合、単純にその職務内容自体のみを評価するのではなく、
これまでの職務内容・職業経験及び能力を評価して基本給に差を設けることは認められています。
 したがって、この瞬間、同じ仕事をしているからといって、
当然に同一賃金になるわけではありません。

【例2】
 正規社員A  転職者で、転職前に営業等多くの職業経験を有している
ものの, 経理の経験はなかったが、経理として転職
 非正規社員B アルバイトとして経理の仕事をしている者
 勤務内容   正規社員Aも非正規社員Bも同じ経理の仕事をするケース
 基本給    正規社員Aの前歴の職業経験を理由としてBよりも高い基本給を得ている。
 (答え)⇒アウト
  Aは経理の業務で就職しており、これまでのAの職業経験は経理業務とは関連性がなく、
経理業務で生かされることがない場合は、AとBとは「同一賃金」とすべきだと言われています。
  もっとも、実際には、経理経験のないAを経理として採用するにあたって、
経理業務とは無関係の前職の職業経験を重視して、
Aの給与をBよりも高く設定することは有り得ないと思います。
なお、この場合でも例1と同じように、Aが総合職として就職し、
たまたま一時期経理の仕事をすることになっても、
その後職業経験を生かした業務に異動となることが想定されている場合には、
AとBとの間に給与に差が生じても良いことになります。

  (次回へ つづく 常任理事 弁護士山田勝彦)                    

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