ツマガリ【No9いい会社視察2016/9/12】

今回は2017年「第7回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」にて審査委員会特別賞を受賞された『有限会社ツマガリ』さんをご紹介させていただきます。
https://www.tsumagari.co.jp/
2016年9月に坂本ゼミ夏季合宿先のひとつとして訪問させていただきました。
 
坂本先生の授業やゼミでは、時々、洋菓子店ツマガリの名前は耳にしていましたが、調べてみてはみるものの情報は少なく、どのような特徴のあるお店なのかあまり分からない状態でご訪問しました。しかし、商店街に点在する工房やお店、ツマガリ食堂(従業員用の施設)を拝見してから、津曲社長のお話を聞き始めた時点で、地元を大切にした在り方や、社長の人柄に引き込まれ、圧倒され、感動したことを今でも昨日のように思い出します。

1950年生まれの津曲孝氏は祖母に育てられ、14,5歳の時、宮崎県から東京へ集団就職にやってきます。当時70歳を超えていた祖母は、“お前のことは心配していない。人に好かれなさい。仕事は一生懸命にしなさい”と言って4000円を持たせてくれたと言います。東京では半年間学生服のままだったこと、黄色い洗面器ひとつで銭湯とラーメンを作って食べた思い出を明るく語ってくれました。

“仕事はあればよかった、どの仕事もひどい仕事だとは考えすらしなかった”時代です。“仕事に惚れないと運が回ってこない”と考え、“仕事に注ぐ思いの強さが大切”だと話してくださいました。例えていえば、“デザイン学校に通わなくともよい絵は描ける”と。身一つあれば何でもできるという断言。集団就職の経験、感性や直感を大切にする津曲さんならではの人生観だと感じました。

いくつかの仕事や人との出会いを経て大阪へ移り、22歳でパンやお菓子を製造するエーデルワイスに入社。1976年26歳の時に会社の指示で本場洋菓子を学ぶためにスイスに渡ります。英語すらまったくわからないにも拘らず3か月でドイツ語がわかるようになったと言います。そしてこのスイスでの経験が、“本物の材料でつくること”の重要性を気づかせたのです。

30歳の時、エーデルワイス社が洋菓子専門店としてアンテノール社を設立。津曲さんは初代社長になりますが、納得のいく洋菓子を追求したいと37歳で独立し、有限会社ツマガリを設立。兵庫県西宮市に洋菓子製造販売を行うお店;ケーキハウスツマガリをオープンします。今では従業員250名、売上は16億円となり、人気店の地位をゆるぎないものにしています。

お菓子作りにおいて材料選びには妥協が一切ありません。人気商品であっても常に改良を重ねています。例をうかがった範囲だけでも、砂糖はオーガニック栽培のアルゼンチン産、アーモンドはイタリアのシシリー島、牛乳は岩手県にある完全自然放牧酪農の牛から搾ったもの、バターは乳酸菌から作る等、それぞれ厳選に厳選を重ねて今の材料に辿り着いています。さらに常にお客様のために味を追い求めていて、良い材料がある場合はなんの躊躇もせずに切り替えるそうです。今では世界中から良いものが集まってくるようになっています。“お客様を喜ばせたい、1分でもその人の気持ちに入る”という津曲社長の感性がそうさせています。

子供の頃の貧乏だった経験が、スイスで本物のお菓子作りを目の当たりにした経験を通じて、“人を喜ばせたい”という思いと繋がることで、利益や効率ではなく最高の洋菓子を並べるお店になったのだと感じました。

印象的だったお話をいくつか挙げてみます。
“洋菓子作りにおいて、本物を常に追求しています。しかし果てがないもの、何が本物かわかるものではない”
“常にこれでいいのだろうか?の人生。人間にも本物はなく、常に学び続けなければならない”
“得をとれば徳が逃げる。徳をとれば得を得る”

神戸方面にお越しの際は、是非甲陽園本店へお運びください。
生菓子は本店のみ限定メニューです。
阪急甲陽線(神戸線夙川駅乗り換え)甲陽園駅より徒歩約2分です。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。少しでもお読みいただく皆さまのお役に立てば嬉しい限りです。個人的な認識をもとにした投稿になりますが、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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