経営理念の浸透について思う

 最近、会社の企業の訪問調査をとおして感じたことは、「経営者は、会社の目的、方向性、将来像を経営理念として定め、それを社員に浸透させたいと考えている」ということだ。

ここであらためて、「浸透」の意味を考えてみる。
大辞泉によれば、「浸透」とは
 ① 水が、しみとおること。「雨水が地下に浸透する」、「堤防の浸透破壊」
 ② 思想・風潮・雰囲気がしだいに広い範囲に行きわたると。「新しい生活様式が国民に浸透する」
 とある。
 
 この事から読み取れることは、浸透とは急激なものではなく、「しだいに」とか「時間をかけて」という時間軸がある事がわかる。本来浸透とはそういうものであると考える。

乾いた砂に水をかければさっと水は染み込む。しかし、赤土に水をかけてもそうはいかない。時間がかかる事は想像できる。
 赤土に早く水を染み込ませようとするのであれば、強制的に圧力をかけて水を染み込ませるか赤土と水を掻き混ぜるしか方法はない。
組織も同様ではないだろうかと考える。
 
 会社の経営理念は、経営者の考え方から始まる。急激な理念の浸透をさせようとすることは「俺の考え方を理解しろ」と上から目線で言っているようなものではないだろうか。
 社長は、社員の幸せを考えた結果として、すべての社員が経営理念に基づく自分と同じ考え方になって欲しいと考える。
 
「社長がいなくても安泰な組織、盤石な組織」、「社員が自ら考え行動する組織」が理想である。
 「いい会社にしたい」と焦る自分自身の気持ちを抑えて頑張ろうと自分自身に言い聞かせるが、なかなか進まない理想の会社に焦り、社員を前に大きな声を出してしまいそうなこともある。
 社員一人ひとりとの対話を忘れるなと自身に言い聞かせる。

 4月に坂本先生と企業視察をしたS社には明文化された「企業理念」がなかった。まだ40歳を少し過ぎた若い社長は「これから理念を作るんです」と正直に話されると、坂本先生は「経営理念は全社員で作りなさい」とお話しされた。
 
また、5月に訪問したA社では「経営理念」や「行動指針」が明確に策定されていた。会長にお伺いすると、S社では社長は何年かかけて原案を作成され、社員との間で数年間をかけて「経営理念」を策定したという。

また、今でも日頃から社員と理念について意見を交わし常に理念の改定もいつでも行う事も理念自体に記されている。
 要は、理念自体に対する全社員の「共感」が前提となっていた。
じっくり、ゆっくり、理念の浸透も同じだという事を学んだ。
石川 勝 
 

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