坂本先生が中学生と面会した時の思い出

一昨年の5月21日だった。坂本先生が法政大学にいらっしゃた頃の話です。
坂本先生から、愛知県の中学生が法政大学大学院の坂本研究室を来訪されるという話をお聞きした。
 日ごろは経営者や社会人を前にしてお話しされる場面が多い坂本先生ですが、中学生たちにいったいどんな話をされるのだろうと興味深々だったので同席させていただく事をお願いした。

当日、約束の時間になると、引率の先生と生徒さん6名が研究室にお越しになった。
 中学2年生の彼らは、制服も一まわり大きくまだ子供の面持ちだった。お聞きすると、中学校の周りには田んぼだらけでコンビニもないという。その日は修学旅行で東京を訪れた初日で、東京に来たのが初めての子もいて、動く歩道にも初めて乗ったという話も出た。
 今回修学旅行に来た中学2年生の人数は75人で、生徒さんたちは6~7名のグループに分かれていろいろな場所に行って勉強する時間だった。
 
生徒さんたちは、自分たちが用意した質問にそって次々に質問が始まった。
「成功する会社の定義は何ですか?」、「成功している会社の共通点は何ですか?」、「失敗した会社にはどんな共通点がありますか?」

 坂本先生は、いつもよりも優しく、しかし、妥協することなくに真剣に答えられた。いい会社は、「リストラをしない会社」、「お客様に嘘をつかない会社」、「仕入れ先をいじめない会社」、「利益を高めたくて社員やその家族を不幸にせずに弱き人々を助けている会社」、「規模が大きいとかではなく、世のための人のために役立っている会社」、「価格競争をしなかった会社」、「全社員が一つの方向に向かって一生懸命に働いている全社員参加の経営をしている会社」等々と答えられた。
そして、失敗する会社は、その逆の事をやってしまった会社である事と指摘。

さらに生徒さんたちの質問はつづき、「僕たちが就職する前に学んだ方が良いと思うことは何ですか」と。
坂本先生は、「社会に出る前に人が嫌がるような仕事も経験しなさい」、「世の中に出た時に好きじゃない仕事に就くこともある、しかし、全ての仕事は世の中に必要な仕事である」と。

 面会時間も押し迫り生徒さんたちの最後の質問は、
「今まで見てこられた会社で一番いい会社はどんな会社ですか?」
坂本先生は、日本理化学工業の障がい者雇用の話をされ、
「誰だって、障害をもった子供を産みたいと思うお母さんはいないじゃないですか」と話された時、女子生徒が小さくうなずいたのを見た。
 
中学校の図書館には「日本でいちばん大切にしたい会社」があるという。今日のためによく勉強されていた。

 後日、坂本先生のところに生徒たちから心温まるお礼の手紙が寄せられていた。手紙には、修学旅行で訪れたグループごとの発表があり、坂本先生が話された「いい会社の共通点」、「失敗した会社の共通点」を発表した事が書かれていた。 

20年、30年後。
次の時代を担うのは、純真無垢な彼ら彼女である事は間違いない。

石川勝

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