忘れらない社員の死
6月のこの季節と夏の賞与の準備をする時期になると必ず思い出すことがある。
12年前まで当社で再雇用で勤めていた川村さんという社員の死である。お亡くなりになったのは6月30日。
その日は当社の賞与支給日である。
肺がんと宣告された彼は、亡くなる10ヶ月くらい前から病院の入退院を繰り返しており、放射線の治療を繰り返していた。
賞与の支給の当日。夕方、奥さんから危篤との連絡が入った。私は、賞与の支給をいつもより早めに行い、彼の賞与を持参して幹部社員と病院に向かった。酸素吸入をしやっと呼吸をしている彼の姿に涙が出てきた。
私は、意識がかすかにあった彼の手を持ち上げて
「川村さん、賞与を持ってきました。また元気になって会社にきてくださいね」と呼吸器を付けた彼に向って大きな声で話しかけた。
賞与明細を手渡すと、彼は目を開いてしっかりと私の目を見てうなずいてくれた。
しかし、翌朝、奥様からご逝去の連絡をいただき、それが最後の別れとなってしまった。
川村さんが亡くなってからは、毎年忘れる事なく6月30日の彼の命日には香典をご自宅にお届けしてきた。今年も仏前にお届けしたいと思い昨日、奥様に電話をし近況を伺った。
「今年はもう13回忌になります。川村が生きていれば75歳です。私は元気でJAでパートをしていますよ。社長さんも元気ですか。娘も君津で元気に勤めていてたまに帰ってきてくれます。」
そこには夫を早くなくしたが元気でいる奥さんの様子があった。
川村さんの命日が来るたびに元気で頑張ってくれた彼の姿と創業から50年の間、当社は多くの社員に支えられて今日ある事をあらためて振り返る。
坂本先生は、企業の経営の目的は、「会社に関わるすべての人の永遠の幸せの追求」とおっしゃっている。
さらに「永遠」という意味について、坂本先生は、「在社中だけではなく、退職後も、死ぬまで、いや、お亡くなりになった後も、永遠に」とおっしゃていた事を思い出す。
彼は、毎年、私にそのことを教えてくれている。
石川勝
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