「くず餅ひと筋真っ直ぐに」(船橋屋への企業視察)
株式会社船橋屋は、東京都江東区・亀戸天神前に本店を構える1805年創業の言わずと知れた「くず餅」の老舗です。
先日7月31日、4月に活動を開始した「人を大切にする経営学会 人財塾」の塾生有志にて、船橋屋さんに訪問させていただきました。今回は、特に印象深かった点をご紹介させていただきます。
1.ゆるぎない「くず餅」への思い
船橋屋さんには200年を超えて受け継がれている社訓「売るよりつくれ 浮利を追うな」があり、それを今の時代に置きかえた経営理念として「くず餅ひと筋真っ直ぐに」が掲げられています。さらに、その下位の経営理念として
① くじけない心意気
② ずっと磨き続ける自慢の商品
③ もっと良いを実現する経営体制
④ ちから強く全力で目標達成する人財
が定められています。この下位の経営理念、頭文字を縦読みすると「くずもち」になります。(ちなみに、会社メールアドレスのドメインも@kuzumochi.jpです。)
この経営理念が浸透していることを感じたエピソードを2つご紹介します。
船橋屋さんのくず餅は、小麦澱粉を約450日乳酸発酵させるという手のかかる長い工程を経て製造されますが、品質へのこだわりから防腐剤等を添加していないため、くず餅の消費期限はなんと2日間です。真空パックを使うなどして消費期限を伸ばした商品を取り扱えば、さらに売上を増やすことはできるものの、くず餅への徹底したこだわりから、風味を損なう真空パック等は導入していないとのことでした。
また、船橋屋さんでは、「船橋屋こよみ」という和カフェを展開したり、くず餅製造工程で生まれる乳酸菌由来のサプリメントの販売等を検討されているとのことですが、これらは、サイドビジネスという視点よりも、いかに国内外や若い世代にくず餅の認知度を広めるか、くず餅に興味を持つ機会を作り出せるかというくず餅への思いから生まれ、また、進められているものとのことでした。まさに、「くず餅ひと筋真っ直ぐに」の精神です。
2.リーダーズ総選挙とSNSの活用
船橋屋さんの特徴ある取り組みのひとつに「リーダーズ総選挙」があります。これは、正社員及び勤続5年以上のパート社員の全員の無記名投票により、会社の幹部(リーダー)を決定するというもので、現渡辺雅司社長の下で過去2回実施されています。その結果、第1回選挙で過半数の得票を得た佐藤恭子氏が当時34歳でありながら実質ナンバー2の地位にある執行役員に抜擢され、また、第2回選挙で社員の支持を集めた7名(うち20代の方が2名)が部長職・課長職に抜擢されました。
そして、佐藤氏をはじめとする社員が選んだリーダーの下でSNS等を活用した船橋屋・「くず餅」の認知度を上げる様々な取り組みが行われています。このような取組みが結実したほんの一例ですが、正社員数名の採用枠に約1万6,000人の学生からの応募があったというお話は、まさに信じがたいの一言でした。
このようにゆるぎない経営理念と時代に合わせた必要な変化、そして社員自らが選んだリーダーの下で、一丸となって成長を続けている船橋屋さんに心奪われる訪問となりました。
(人材塾 村松洋之)
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