株式会社坂の途中【No21いい会社視察2015/2/22】

今回は2015年2月に坂本ゼミ春合宿先のひとつとして訪問した株式会社坂ノ途中さんをご紹介致します。日本でいちばん大切にしたい会社大賞の受賞や坂本先生の著書には掲載されたことはありませんが、当時31歳だった小野社長のお話から伝わってきた農業を取り巻く状況と小野社長の世界観は今も印象に残っていますので取り上げてみました。

学生時代は世界を旅し、就職は外資系の金融機関で商品開発をしていたという小野社長。2009年に株式会社坂の途中を設立します。まったく畑の違う金融業界から、本物の畑に職場を変えたのです。人類の過去から学んだ持続可能な社会に向けた事業展開のお話は、今までの経営者の皆様からは聞くことのなかった視点に感じました。個人的にも農業や食について根本的に関心をもつきっかけを与えてくれた訪問でした。

●なぜ古代文明は滅んだ?
古代遺跡があった場所はその時代において人が集まる緑豊かな場所であったがメソポタミアやコーカサスの古代文明は今砂漠になっている。
それは土に負担を強いる農業だった。多くの家畜が餌としての草を食べ、地下水を使いすぎた結果、その土地では農業ができなくなったことで文明も終焉した。

●その反面、文明が長く続いた例はローマ帝国と日本
ローマ帝国は農業を重視。農家であることが社会的なステイタスだった。政治家も副業で農家をしていたほど。農業が持続的である必要があった。
日本は四季がある豊かな国土であったことと知恵をくわえたことで里山に代表されるようにさまざまな地域において農業を中心とした持続的な国土保全サイクルを作り上げた。

●世界の農地事情は?
現在世界の農地は14億haあり、毎年600万haの土地がダメになっている。今まで人類がダメにした土地は20億haあることから、14と20を比較すれば、歴史的に人類は土地を農地として持続的に維持できていないと言える。従って持続可能な農業をすることが重要。
ちなみに日本の農地は450万haでトップの中国5,1億haの約0.9%。

●持続可能な農業とは?
今の農業は戦後30数年で穀物生産量は2.7倍になったというが、投入した肥料は9.4倍にのぼり実は効率的ではない。農薬を撒くことで土がやせている。従って持続可能とは言えない。

●持続可能とするためには
・外部資材の量をできるだけ減らす(農薬や肥料だけではなくあらゆる地球資源を含む)
・科学や技術でカバーする
・その土地の土質や気候にあった作物を作る(無理に何かを作ろうとすると肥料が必要になってしまう)

●有機農法のすすめ
日本の有機農業は農業全体の約1%
先進のオーストリアやデンマークは約10%。
キューバはほぼ100%、ブータンは約95%
EUは有機栽培に転換すれば補助金を出す制度を導入したが、それでも年に1%程度しか増えていない。
日本は毎年3.6%の農地が耕作放棄地になっている。理論的にはこの土地を有機に転換することができれば日本は加速的に有機大国を実現できる。

●長く続かない新規就農
新規就農者の70%は有機農法を希望。しかし新規就農しても5年後には40%は辞めてしまう。つまり、やりたい人がいても現実的には就農を継続できない。
主な理由は、
空き農地の条件が良くない。(狭い、水、日当たり、排水等)
収穫量が少なく不安定なため通常の流通業者は扱ってくれない。

●坂ノ途中が目指すもの
新規就農者が長く農業に従事できるようにサポートすること。
一軒一軒の就農規模は小さくても、グループとなって全体の生産計画や進捗管理をすることで少量・不安定というマイナス要素を一定量・安定というプラス要素に変えること。
今では扱い品目約300種類を超えている。

●現在の販売先
当初は飲食店向け販売からはじめ、次にネット通販を開始。一般的なネット通販のリピート率は10%以下と言われるが同社は倍以上の実績。しかも平均2年以上継続リピーター。品数が多いことで顧客が飽きることなく継続している。
通販の次に実店舗として八百屋を開始。品質や数量、バラツキ対策、新規就農者コーナーを設けることできめ細かく販売面を強化。今では京都と東京(代々木)に直販店がある。

●最後に
小野社長は設立当初、小さくきれいなビジネスモデルを目指していたと言いますが、3年ほど経ってその姿になった時、満足感を持たなかったようです。“これ以上にはならない自社を感じ取った”と。その時にさらなる成長意欲や社会貢献意欲に目覚めたのだと感じました。
そこで新たな取り組みに着手します。
・新規就農者を教育する場として自社農場運営開始
・ウガンダオーガニックプロジェクト(2012~)
 →ゴマの栽培から始まりバニラビーンズ、シアバター、はちみつ、野菜の栽培へ拡大中

同社は、人類の歴史から学び、地球に負担をかける農業を転換させる大きな目標をシンプルに我々に伝えているのだと感じます。同社のメッセージは極めてシンプルです。
“百年先も続く、農業を。”
“未来からの前借り、やめましょう。”

最近では、工業製品と化した食べ物に疑問を持つ人々が多いように感じます。
安心安全を志向していくと様々な場面で不自然であることに気づかされます。
同社の活動を通して、持続的な農業という根源的な生業に人々が多くの敬意を払い、意識と時間をそそぐことが自然なことであると感じます。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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