退職させない!

退職させない!

2018年9月19日日経新聞「真相深層」で、
「労働局への相談件数、解雇上回る」「『退職認めぬ』慰留悪質に」
との記事が出ておりました。

▼退職認めない企業
記事によれば、退職届を出そうとしても上司から
「絶対辞めさせない」と面談を拒否され、退職届を受理されなかったり、
退職時に「ここまで育てたのに何だ」
「君がやめて損が出たら賠償請求するぞ」とすごまれたりと
慰留されるとのことです。隔世の感があり、今や、退職届を提出する
という代行ビジネスまで出ているそうです。

▼退職届、2つの意味
退職の届出といっても、法律的には2つの意味があります。
①一方的な辞職の意思表示、②合意解約の申込み、
の2つです。
まず合意解約の申込みとは、あくまで会社と社員との間で
退職について合意して決める方法です。
一般的には、この意味として考えられています。
退職についての申し入れがあり、会社と社員で話し合いをして
退職日を決め、引き継ぎ等をして退職することになります。
それまでは社員は、退職の申込みを撤回することができます。
一方的な辞職の意思表示というのは、社員側から一方的にできます。
一方的な方法ですので、まず会社にちゃんと届かなければなります。
通常は内容証明で出します。
撤回はできません。
そして大事なことは、届いてから2週間で退職となります
(民法627条1項)。

▼無理やり留めることはできない
一方的な辞職の意思表示がなされた場合には、
会社として引き留める手段はありませんので、
2週間以内に引き継ぎをさせ、退職をしてもらうしかありません。
新聞記事のように、無理やり引き留め、2週間以上拘束した結果、
転職希望の社員が退職した場合には、
むしろ引き留めた会社に損害賠償の責任が生じる可能性もあります。
なお、新聞記事にもあったように、代行業が流行っているそうですが、
代行業はあくまで通知を出す代行ができるだけで、
会社との交渉をする資格はありませんので、
代行業者が交渉に入ってきたら、交渉を拒絶することができます。

▼合意退職が理想
「いい会社」は離職者が少ない、とはいうものの、
これからはもう少しフリーな働き方が予想されます。
とすれば、Win-Winの退職ということも想定されます。
できるだけ、会社と社員との間で、会社の業務に支障がなく、
社員本人にも負担の少ない方法で退職合意を目指すことが望まれます。

(金曜日 学会法務研究部会 弁護士 山田勝彦)
                                  

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