慶応義塾大学大学院 前野隆司教授【番外No29特別講演2018/9/15】

(毎週火曜日に投稿しております元坂本ゼミ生通信です。今週も番外編として9月に開催された学会の講演からお届けいたします)

2018年9月15~16日に慶応義塾大学日吉キャンパスで開催された“人を大切にする経営学会 第5回 全国大会”から、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科前野隆司教授の特別講演において印象的だったお話をご紹介させていただきます。

昨今、働き方改革が政治やメディアで取り上げられるようになっていますが、前野教授は“何のための働き方改革なのか、その目的が単に経済成長に向かっていることが問題” “社員の幸せという視点が欠けている” と指摘されました。
そして、“人は健康には気を付けてはいるが、幸せには気を付けていない” “幸せは大切なこと。幸せは原因であり結果でもある”、という気づきから講演が進んでいきました。

●特別講演のテーマ;働き方改革と幸福学

ある調査ではこのような結果があるそうです。
・幸せな社員は不幸せな社員よりも生産性が1,3倍高く創造性が3倍高い
・幸福度が高い従業員は欠勤率・離職率が低い
・幸せな人は長寿である
・収入約600~800万円のエリアを越えると幸福度は高まらなくなる

●坂本先生との立ち位置について
坂本先生は文系として現場中心で実践的であり、まさに経営の王道・醍醐味、と言います。
対して前野教授は理系の立場から主に大企業を中心に幸せの研究を推進し、多角的に多くの項目やデータをもとに客観的に分析・研究している、とされました。

●学問としての幸せ
通常、英語では幸せ=Happyですが、Happyは一般的に感情を意味する言葉。
経営学としてはWell-Beingという。心の基盤となるような在り方を意味する言葉。

●長続きしない幸せと長続きする幸せ
・長続きしない幸せ 地位財=金・物・地位 (→他人と比較できる財)
・長続きする幸せ 非地位財=安心・健康・心

●幸せの4つの因子
長続きする非地位財の“心”に注目して日本人1500人にアンケートを実施し、その分析から導きだされたものが【幸せの4つの因子】です。
① 【やってみよう因子】 夢や目標を持っている人、かなえた人
② 【ありがとう因子】 感謝する人(感謝される人ではない)、弱いつながりであっても多様な人とつながっている人、他人を幸せにしたい人はあとからじわっと幸せになるそうです。
③ 【なんとかなる因子】 失敗は成長。ポジティブとネガティブの割合は3:1が良い
④ 【ありのままに因子】人の目を気にしすぎない(人はつい人と比べてしまう)

キーワードとしてまとめると以下の4つがそろった人が幸せな人だと言えます。
① 自己実現と成長
② つながりと感謝
③ 前向きと楽観
④ 独立と自分らしさ

●アドバイス
一人一人の幸福度向上法として、一日の最後にその日にあった3つの良いことを書きだす習慣が良いとアドバイスがありました。そうすることで日中、良いことに対してより意識的になるそうです。
以前テレビか何かで個人的に聞いた同じような話で、一日に全くの他人3人と一言でも言葉を交わすことが脳に良いと聞いたことを思い出しました。

講演中、前野教授は関連する記憶や事例が湧き出ていて、サービス精神が旺盛でポジティブ、“この学会に集まる人達だから伝えたい”という熱い気持ちが笑顔と共に伝わってくる楽しい時間した。

世の中は依然として大企業中心に売上やシェア、生産性、時価総額など、勝ち負けや人を大切にはしない経営指標が多くの経営者の頭を支配しています。日本企業の中で大企業の数は約11,000社0,3%しかありませんが、従業者数では約1430万人31%を占めていますから、前野教授が研究対象とする大企業が人の幸せを基準に経営が変わっていくことは大きな意義を持ちます。
そもそも“中小企業と大企業では浅瀬と大海原ほどに生きる世界が違う”という坂本先生のご指摘が頭にあり、同じ尺度では測れない面もあると思いながら、興味深く前野教授のお話を伺わせていただきました。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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