高齢化社会の行く末

普段、TVをあまり見ることはないが、
先日、たまたまNHKで放送された。
「人生100年時代を生きる~第1回「終の住処はどこに」~」
という番組を見て考えることがあった。

私と同じく番組を見た方もいるだろうが、
番組では人生100年時代を迎える日本の課題を見つめるをテーマに。
終の住処について、高齢者を受け入れる各種施設の不足が
懸念される中、その切り札として登場した
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」について紹介していた。

サ高住は、比較的安価で手厚い介護が受けられる
特別養護老人ホームの待機者が30万人を超えるなか、
施設の担い手を官から民へと転換しようとする国が、
その切り札として、7年前に導入した
民間事業者が運営するサービス付き高齢者向け住宅で、
60歳以上の高齢者または要介護者・要支援者もしくは、
その同居者であれば、基本的に入居可能となっている。

国は当初、程度の軽い要介護者の受け皿にしようと
考えていたようだが、施設運営者にはその思いが
伝わっていない現状が番組で伝えられた。
というのも、施設運営者の主な収益は、初期入居費用と
定期賃貸収入、そして入居者に対する介護報酬からなっている。

初期入居費用と賃貸収入は簡単にあげるわけにはいかない。
その一方で、介護報酬は要介護度によって決まり、
当然の話だが、要介護度が高くなるにつれ、
その報酬は高くなる。
つまり、要介護度の高い高齢者をどれだけ受け入れるかが、
その後の施設運営を左右する。。

それゆえ、国が考えているように、要介護度の低い高齢者だけを
受け入れていては、その運営は成り立たなくなる。
しかも、要介護度の低い入居者は、自身で行動できるケースも多く、
知らぬ間に施設から出てしまい、徘徊をする認知症を患う
高齢者も多く、その対応に追われる施設も少なくなく、
職員への負担が大きくなっている。

そんな状況もあり、施設に空きがあるのに受け入れを拒否するケースや
病院から退院せざるを得なくなった要介護度の高い高齢者を
紹介してもらう施設や要介護度の高い高齢者が入居するまでの
穴埋めとして、要介護度の低い高齢者を入居させ、
その入居が決まると退去させられるといったケースが紹介された。

施設の経営面・運営面や職員にかかる負担を考えれば、
これがすべて悪いこと、間違っているといえない部分も正直ある。
ただ、少なくとも高齢者・社会的弱者を受け入れる立場の側が
損得だけを考えた行動に走る姿には正直不安しか感じなかった。

そんな中で、新たなスタイルを模索する事例もないわけではない。
サ高住の事例ではないが、先日訪問したある社会福祉法人では、
介護を必要としていない方が入居するマンションを用意し、
その後、各種症状が出始めると、認知症専門フロアや
医療依存度が高い方向けのフロア等へ、入居者の状態に合わせ
最適なフロアに移動して住み続けられるような仕組みが構築されていた。

誰しもが年を取り、自分がいくら望んでいなくても、介護を必要とする
ときは確実にやってくる。
その時に備え、介護する側・される側も、今後ますます進展する
高齢化社会をどう生きていくか考える時期かもしれない。

人を大切にする経営学会事務局支援スタッフ 坂本 洋介

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