伊那食品工業株式会社【No36いい会社視察2013/3/15】

今回は2013年3月に坂本ゼミ春合宿先のひとつとして訪問し、朝の掃除、朝礼見学、井上社長のお話、施設見学、レストランでの食事、塚越会長のお話、懇親会と盛りだくさんだった視察から、塚越会長のお話を中心にお伝え致します。
来週のこの通信では創業家である井上社長のお話を予定しております。


概要(2013/3訪問時にいただいた会社概要から。現在役員の役職は一部変わっております。)
代表者 代表取締役会長 塚越 寛
代表取締役社長 井上 修
専務取締役 塚越 英弘
常務取締役 埋橋 祐二
設立 1958年6月
住所 長野県伊那市
年商 171億3500万円(2010年)
社員数 414名(2011年9月)


伊那食品工業は寒天の製造販売をしています。寒天は日本で発明された乾物として昔から冬に農家が副業として生産してきた相場商品でした。同社は年間を通した安定生産を目的に1958年に設立されます。天候による品質のばらつき改善や生産設備の導入、衛生面の改善、世界各国にパートナー企業を作り良質で安定的な寒天の確保に努めてきました。さらに寒天の研究開発をすすめ、様々な用途や機能を拡大させてきました。同社の歴史は日本の寒天の歴史そのものと言えます。
しかし同社の成長には、現会長である塚越会長の存在なくして語ることはできません。
塚越会長の書籍や記事は多数ありますが、今回は直接伺ったお話から記載させていただきました。

●肺結核による隔離生活と働くことの喜び
高校2年の時に肺結核を患い3年間の闘病。当時は死を覚悟しなければならないほどの感染症です。
太陽の光を浴びて外を歩く人を見て、“人は健康であることが一番幸せ”と確信します。
松下幸之助氏、稲盛和夫氏も若い時に肺結核を患っています。塚越会長にとって大病が人間形成に大きく影響したことは言うまでもなく、“選んで病気になることはないが、若い時の辛い経験は避けるのではなく受け入れることが大切”と説いてくれました。
また、入院中に“客観的に物事を見る癖ができた”と言います。このころ形成した思いや考え方は、幸運にも肺結核から回復をして間もなくの21歳のときに伊那食品の社長代行を任され、発揮されていきます。
当時、お見舞いに来てくれた友達は、今でも無二の親友だそうです。人への感謝の念が生まれ、働くことが幸せであることを実感します。その思いはいつしか一緒に働く社員への思いやり・報いたいという気持ちが、伊那食品の現場や事業を改善するための工夫に向かいます。

●遠きをはかる経営
二宮尊徳の教えの通り、同社は遠くを見据えた計画と、同時に日々一歩一歩の確実な歩みが経営哲学となっています。
同社は上場していません。現在の株式市場では株主の利益を重視した経営をしなければならない場合や、社員の給与よりも株主配当が重視されがちです。上場はメリットもありますが、経営の自由度を奪い、誘惑があり、年輪経営の敵である急成長を招き社員の幸せが犠牲になってしまうと考えています。塚越会長は少なくともご自身がいる間は上場しないとお話されました。
四半期決算が当たり前の世の中にあって、“決算は3年に一度くらいがちょうど良い”と言い、その客観的な洞察が学びとなります。
また“日本のように20年間物価が下がり続けた国は世界にはないだろう”と言います。しかしこの現象はデフレではなく、単なる“安売り競争”だと言います。経費削減が正しいこととして当たり前のように認識されている日本人の意識がおかしくなっているのです。経費とは他社にとっての売上です。日本中が経費削減をしていけば、経済が縮小していくことは当たり前です。この風潮が人員整理や給与カット等があたかも正しいことのように錯覚され、経営者の質をも低下させ、その地位に居続けさせてきたのでしょう。
坂本先生が言う、経営者が真の経営を学ぶ場の必要性に納得します。
塚越会長は、多くの経営者は自分優先、自分の都合だと言い、そこから経営の本質を探究したことで利他の必要性に繋がったと言います。多くの経営者に経営の本質を自問自答できる力があるかが問われています。

●年輪の例え
ユリの木は1年に10数mm太くなり成長が早い → 強風が吹くと折れやすい
屋久杉や木曽檜は1年に1mmも太くならない → 風雨に強く長い間かけて少しづつ育つ

●利益は健康な体から出るウンチである
身体を健康にすることが第一であって、ウンチをたくさん出そうと思って経営することはおかしい。必要なところにしっかり使い、最後に余ったものが利益である。

●古典やことわざから学ぶ
時代の洗礼をうけて残ったものであり、ひとつの真理として学ぶべき価値がある。
今の時代は“哲学のない時代”。読んだものや学んだものは勉強したつもりになってしまっている。


同社の歴史は日本の寒天の歴史そのものと言えます。同時に塚越会長が導いた同社の歴史は、日本の中小企業の見本となる経営です。寒天の製造、深堀や研究開発、理念の追求、社員の成長、社風の醸造、経営者の行い、地域連携などすべてが参考になります。300万社以上ある国内中小企業の一人でも多くの経営者が同社に触れて、自身の経営を見直すきっかけになること願います。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

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