下りのエスカレーターを駆け上がる

世の中では、斜陽産業と呼ばれる業種がいくつか存在する。
斜陽産業とは、需要が傾向的に減少している産業のことで、
産業の発展段階からみて、成熟期を過ぎてしまい,
活発な需要が発生しない場合や,技術革新などを利用した
新しい産業・それに替わる代替品の登場,
あるいは外国の競争力の強い競合商品の輸入などによって、
従来の需要が侵食される場合などがそれに当たる。

よく、経営者の方と話をすると、
「うちは斜陽産業だから…」とか
「うちは構造的不況業種だから…」
と嘆くことが多い。

しかし、筆者がこれまで見てきた企業の中には、
「下りのエスカレーター」に乗っているといってもよい
斜陽産業の中にあって、
そのエスカレーターを勢いよく駆け上がって、
成長を遂げている企業も多い。

たとえば、新潟県新潟市にあるダイニチ工業は、
家庭用石油ファンヒーターの製造販売を行っている。
普通に考えれば、各家庭にはエアコンが整備され、
さらには温風機など新たな暖房機器が登場している
こともあり、石油ファンヒーターに今後の需要の
伸びがあるようには思えない。

しかし、成長性がないと思われてはいるが、
石油ファンヒーターは右肩下がりの斜陽産業では決してない。
近年、エアコンと併用するケースも多く、
業界団体調査では、直近5年の年間出荷台数は
200~230万台で横ばいで推移している。
ちなみに、2018年も220万台と、大きな伸びしろはないものの、
安定推移している製品だ。

1980年の家庭用ファンヒーターの生産開始から
累計生産3,000万台を達成した際の新製品発表会の中で、
同社の吉井久夫社長は、

「石油ファンヒーターは年間約200万台をコンスタントに
出荷する市場です」

「ニッチ市場になりましたが、そこでトップを維持
していくには、同業他社との競争だけではなく、
他の商品から石油ファンヒーターというカテゴリーの
シェアが奪われないように考える必要があります」

と話した。

続けて、
「石油ファンヒーターは、まだ新機能を盛り込んだ
商品開発ができており、エアコンに撲滅される
ジャンルではなく、エアコンと棲み分けるジャンルに
なっています。発表会を開催したのは、
そのことをしっかり伝えたかったからです」

とも話している。

そこには吉井氏の「売れているのに、売れていないと思われている」。
こうした世間の誤解を解きたいという思いと、
その誤解が真実になりかねないという危機感があった。

「市場はたしかに安定しているが、業界トップである
われわれが積極的に情報発信していかないことには、
本当に衰退の道をたどりかねない」
「市場は成熟しているが、製品はまだ成熟し切ってはいない」
という決意が見えた。

このような事例は同社に限ったことではない。
業務用・家庭用寒天メーカーの伊那食品工業や
日本茶を中心とした日本の伝統食品の包装資材・
パッケージの製造・販売を行う吉村なども
斜陽産業といわれる業種にあっても成長を続けている。

こういった企業の存在を知れば、斜陽産業だから、
構造的不況業種だから仕方ないという理由は
通用しないはずだ。

人を大切にする経営学会事務局支援スタッフ 坂本 洋介

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