エムケイ株式会社(MKタクシー)【No63いい会社視察2015/2/21】

今回は2015年2月に坂本ゼミの滋賀京都合宿先としてご訪問した『MKタクシー』さんをご紹介致します。当日は青木 信明社長に約1時間半に渡ってお話を伺いました。

●概要 (最近のホームページから) https://www.mk-group.co.jp/
エムケイ株式会社
本社 京都市南区西九条東島町63-1
設立 1960年(昭和35)10月26日
資本金 9,500万円
役員 代表取締役 青木 信明 他5名
従業員数 2,229人 (2019年1月20日現在)
事業内容 タクシー、整備、オートガスステーション、アミューズメント
車両台数 タクシー 730両/ハイヤー 124両  計854両 (2018年10月20日現在)
グループ概要
従業員総数 4,820人 (2019年1月20日現在)
グループ売上高 509億300万円 (2017年度)

●創業の頃
同社の前身は創業の3年前となる1957年に買収したガソリンスタンドです。
創業者は出光興産との取引がきっかけで出光佐三の影響を受けていきます。
当時、タクシー業界は需要100に対して供給20~30くらいだったと言い、同社は新たに免許を交付された10数社の中の1社となりタクシー業界に新規参入しました。

●社員のための施策
創業から約10年は社員のための経営に注力しています。
車両を10台保有することになり、応募200人の中から24名のドライバーを採用。当時はサラリーマンの2倍ほどの収入があったと言いますが、勤務態度は概して良くはなく、無断欠勤が多かった状況だったようです。
なぜそうなるのか。そんな中、創業者は24人全員の自宅を訪問した結果、家庭環境が悪いことを知ります。家族が6畳一間で生活/夜勤明けでもゆっくり眠れない家庭環境など、その現状を知ったのでした。
そこで会社がまとめて一戸建てを建設。自宅を営業所として車庫にはタクシー。節約された出勤時間を営業時間に充てられたことで5万円/月の売上増。自宅のローンは2~3万円だったことから、収入増を自宅ローン返済に充当できたのです。当時“通勤時間で家を買える”のキャッチフレーズは徐々に社会に受け入れられていきました。

●さらなる施策
1970年にはMK婦人会を結成。社員の奥様に会社の理念や方針、ご主人の仕事内容を説明開始。家族を含めた会社の運営が始まっています。
社員教育を開始。はじめは毎月1回2時間からでした。
特徴的な取り組みとして挙げられることにありがとう運動があります。お客様乗車時に4つルールを守れない場合は運賃を無料としました。当時のタクシーではお客様が乗車したとき、挨拶をしないことが常識だった時代です。しかし同業他社からは誹謗中傷があったと言います。今の時代では考えられないことです。
個人的な古い記憶を振り返ると、“あの駅のタクシー運転手はガラが悪い”とか、“ちゃんと勉強しないとタクシー運転手になる”など大人からの話を聞いた記憶がかすかにあります。こちらも今では考えにくい例ではありますけれども。
1982年にはドライバーの地位向上を目指し、森英恵氏に制服のデザインを依頼。何度も断られたようですが、最終的には理念や思いを伝え続け説得してくれました。

●規制との闘い
タクシー業界は行政の指導(法的なものではない)という形で、二つのルールが存在します。
① 同一地域同一運賃
② 6大都市同一運賃
タクシー業界では実車率が重要な指標となります。空車である時間は売上にはならない訳です。当時業界平均の実車率は約40%に対して同社は50%強。
ある時、行政から値上げの指導がありましたが同社は反対します。
値上げをしないことを表明したところ、政治家等の圧力がものすごく、仕方なく値上げに従ったところ、今度はお客様が減少。最終的には同社は行政を相手に訴訟となり、いくつもの裁判で同社の主張が勝訴します。今は和解していますが、タクシー業界のための行動が際立った出来事です。

●タクシー業界の大きな課題
現在、大阪地区23000人のタクシー運転手を例にすると平均年齢は61才。65歳以上は65%を占めます。逆に20代は70人、30代は400人しかいません。
若い運転手が圧倒的に少ないことは業界として大きな問題です。

●同社では“タクシーからの脱却”を目指しています。
大手ネット通販ではモノの輸送の革命が起きるかもしれませんし、故障や修理対応を業務とする業界では選任の車両や設備や人員を有していますが、タクシーが取って変わることもできるかもしれないと言います。多くの場所に5分で到着できるのです。
青木社長は単に人の移動をサポートするだけではない将来を見据えていました。そのためには人財の活性化・教育がすべてと話してくれました。
“タクシー運転手”とは呼ばなくなる時代は目の前まできているのではないかと思え、別な呼び方に自己変革させていく存在は同社ではないかと思えました。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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